年初早々1都3県では緊急事態宣言が発令される見込みだ。また西村経済財政・再生相は出勤者の7割削減を目指すテレワークの徹底を呼び掛けているから、逼塞感の強い新年の始まりになる。
テレワークについて、日本では生産性や従業員のモチベーション維持の面でネガティブな評価が多い。
その理由は「自宅に仕事に集中できるスペースがない」「上司や同僚とのコミュニティツールが不足している」など物理的な問題もあるが、私はモチベーション維持に関するメンタルな研究や工夫が欠けているのではないか?と考えていた。
今日偶々WSJでHow to stop the negative chatter in your headという記事を見かけた。ChatterというのはChat(おしゃべりする)とほぼ同じだと思うが、「くだらないことをおしゃべりする」という意味。Negative chatterというのはそれほど一般的ではないと私は思うが、「マイナス思考を招く心の声」という意味だ。
この記事は「マイナス思考を招く心の声の制御」に関する新著を発行するミシガン大学の心理学教授との対話を記事にしたもので、いかにしてマイナス思考に陥るのを防ぐか?という幾つかの方法を論じている。
そのアドバイスの最後に出てくるのが、「畏敬の念を経験することでマイナス思考を乗り越える」というものだが、その前に二つのアドバイスを紹介したい。
第一に「距離をおいた自己対話」Distanced self-talkを使うことである。我々は他人にアドバイスをする時の方が自己対話で自分にアドバイスするよりはるかに良い場合が多いことが多くの調査で明らかになっている。私の言葉に置き換えてこのことを説明すると「自分を客観視して他人にアドバイスするようにアドバイスする」ということだ。囲碁からきた諺に「傍目(おかめ)八目」という言葉があるが、これは傍(はた)から見ていると自分や相手の手が良く見えて八目のハンディキャップに相当するという意味で、自分を客観視する効果を述べていると思う。
第二に「問題をズームアウトする」ことだ。ズームアウトとはズームレンズの
画角を広げて、つまり対象から離れて広い時空の中で物事を考えるということだ。例えば目の前にコロナ禍が迫っているが、百年前のスペイン風邪の時人々がどう対応したか?などということに思いを馳せてみるのも一つの方法だ。
そしてタイトルにした「畏敬の念を経験してマイナス思考を乗り越えよう」について説明しよう。
ある人は宗教的経験の中から畏敬の念を感じ、ある人は広大な空から、ある人は素晴らしい芸術作品から、ある人は素敵なコンサートから畏敬の念を感じる。何事かに畏敬の念を感じた人は、自分が陥っていたマイナス思考が狭い世界の話でその外側にはもっと広い世界が広がっていることを知ることができる。
私流の説明を加えると「畏敬の念」はアメリカの社会心理学者マズローが唱えた「至高体験」の一部だと思う。マズローは「至高体験」をすることこそ人生の目的だと喝破しているが、至高体験はまさに大自然の神秘や優れた芸術に触れることで得られるものだからだ。
コロナ感染対策で自宅籠りが続くことの一つのリスクは、視野が狭くなり、マイナス思考に陥ることである。これを避けるには本人の意識の変革も必要だが、周囲の人間が気配りすることも重要だ。
テレワークを行っている会社の管理職などには、業務管理に加えて、チームワーカーのメンタルコンディションにまで気を配る必要があるのだが、そのような教育を実施している会社は少ないと思う。
この辺りが日本企業のテレワーク実施上の本当の課題である。
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