世界の世論は化石燃料で走る車から電気自動車に傾いている。より正確にいうと何がカーボンニュートラルなのか?を知らないかあるいは知っていても知らんふりをして政治目的に電動自動車切り替えを喧伝する政治家とそれに提灯をつけるマスコミが世論を動かしているというべきである。
日本では菅首相が今年1月に2035年までに新車販売を電動自動車に切り替え、純ガソリン車・純ディーゼル車の販売を禁止する方針を明らかにした。
また東京都はそれに先駆け2030年までに都内での純ガソリン車・純ディーゼル車の販売を禁止すると発表した。
コロナウイルス対策などで分かるとおり、菅首相には確固たるコミットメントや指導力がなく、小池都知事には人気取りを狙った日和見的発言が目立つので、苦々しく思っていたが、トヨタが腰の据わった発言をしたので評価してブログで取り上げてみたい。
参考にした記事はWSJのMost Toyotas will still use gasoline in 2030,company saysだ。
記事によると米国内で販売する大部分の車は10年先も大部分はガソリン車だろうと述べた。
トヨタの予想によると2030年に北米で販売する車の約半分強はハイブリッド車で3割は伝統的なガソリン車で残りは電気自動車になるということだ。
トヨタは2030年時点ではコスト・利便性で電気自動車はガソリン車に及ばないと考えているのだ。
そしてトヨタはハイブリッドとプラグインハイブリッドは買い易くなるという。
トヨタの方針はライバル各社の方針と大きく異なる。
ホンダは4月に2030年までに4割を完全電気自動車にし、2040年には全車両を電気自動車にしたいと述べている。
トヨタと販売台数で拮抗するフォルクスワーゲンは6つの大型電池工場に投資を行い、2025年までに欧州で1.8万の充電ステーションを運営する予定だと発表している。
トヨタの主張のベースは「ゴールは電気自動車ではない。ゴールはカーボンニュートラリティだ」(トヨタのチーフデジタルオフィサー・James Kuffner)という点だ。
この主張は分かりやすくいうと、電気自動車を作るためにガソリン自動車を作る以上に化石燃料を消費したり、発電のために化石燃料を燃やしているのでは全体として排出される二酸化炭素は減らない(場合によっては増える)のでカーボンニュートラルにならないというものだ。
この点についてNumbers don't tell lie(邦訳「世界のリアルは数字でつかめ!」)の中で「2020年時点で世界の電力の6割以上は化石燃料で発電され、12%は風力と太陽光で発電され、残りは水力発電と原子力発電だ」と述べている。そして化石燃料による発電比率は国によって異なるが、特にインドと中国は化石燃料依存度が高いので、それらの国の電気自動車は石炭自動車だと皮肉っている。また電気自動車では重金属を使う割合が高くなるので、環境負荷が高いとも指摘している。
WSJの記事はニュートラルにトヨタの主張を取り上げている。
我々は政治家やマスコミの日和見的発言に惑わされることなく、何がカーボンニュートラルなのかをデータに基づいて判断する必要があるだろう。
ただはっきりしていることはいずれにせよ「自動車の生産量と使用量を減らす」ことが二酸化炭素の排出量を減らす一番の方策であることは間違いない。
国や地方自治体がまずやるべきことは、人々が役所に出向かなくても用事が済むようにデジタルインフラを整備することや自転車が安全に走ることができるように通行帯を確保することなのである。
そういう観点から見ると今の日本の政治家は大部分「終わっている」のである。
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