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「欠点をなくすより、『憎めない人』を目指そう」~角田光代さんのエッセーから

2019年06月10日 | うんちく・小ネタ

ふと図書館で借りた角田光代さんのエッセー集「わたしの容れもの」の中に、「補強される中身」という小文があった。

話の趣旨は次のとおりだ。

★  ★  ★

長く生きていると色々な経験をして、寛容になるなどよりよい人間になると思っていたが、最近違うと思い始めた。

人は年をとっても、よりよい人間になったりしない。急いでいた人はますます急ぎ、怒りっぽかった人はますます怒りやすくなり、たいてい不寛容になる。・・・どちらかというと、美点より、欠点のほうが、助長されていくような気もする。

欠点をなくしたり、克服したりするのは、どだい無理なのだ。だから目指すべきは、悟りでも賢さでもなく、「憎めない」人になることなのである。

★  ★  ★

角田さんのエッセーは読んでいて楽しい。なぜ楽しいかというと、我々が日ごろ経験することをさりげなく、だけど少し深く掘り下げて新鮮な切り口を見せてくれるからだ。そして時に角田さんが意図したかどうかは分からないが、はっとするような処世訓になっていることがある。

まさにこの「憎めない人」を目指そうはその典型だ。私も長年勤め人を続け人事というものを眺めてきた。そして勤め人として成功する唯一の秘訣をあげるとすれば「憎めない人である」ことではないか?と考えるようになった。スキルややる気があっても「憎まれる人」は長続きしないからだ。

また退職後家族や地域との接点が濃くなるなかで、居場所を確保していく上で一番大切なことは「憎まれない人」になることだ、と考えている。

人は大なり小なり欠点を持っている。美点も視点を変えると欠点になる場合が多い。逆もまた真だ。慎重といえば美点だが、優柔不断というと欠点になる。せっかちというと欠点のニュアンスが強いが、迅速というと美点に変わる。

人は個々の欠点で「憎まれる」より、もっと根本的な資質のようなもので「憎まれる人」になったり「憎めない人」に留まったりするのではないだろうか?

その基本的資質としては「親しみやすさ」「率直さ」「自分の弱点を素直に認めることができる」ことなどだと私は考えている。

日本語の語彙不足で時々漢字の読み間違いをする政治家が「憎めない人」だったりするのも、この辺りに機微があるのかもしれない。

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