金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

韓国の住宅バブル

2006年12月22日 | 国際・政治

昨日(12月21日)の日経新聞朝刊に「住友信託が韓国の4大銀行の一つハナ銀行と不動産業務で提携」という記事が出ていた。記事によると韓国では外国人による不動産投資が増えている一方日本の不動産投資を求める韓国の機関投資家や富裕層も増えているということだ。今大手邦銀は収益チャンスを海外に求め始めている。住信のこの狙いなども面白いかもしれない。もっとも一般論としてこの類の話はビジネスとしてそれ程大きな話にならないことも多い。それは市場の性格やサイズによる。そこで韓国の不動産市場はどのような状況か?と関心を持ったところ偶々ウオール・ストリート・ジャーナルで韓国の住宅市場のことが記事になっていた。簡単にいうとミニ・バブルの状況であるということだががもう少し詳しく記事を紹介しよう。

  • ソウルで最大の話題は北朝鮮の核プログラムではなく、高騰する住宅価格である。韓国人の大部分が住むアパートの価格は2003年初めに比べ全国ベースで53%上昇している。この間に家計収入は僅かに10%しか上昇していない。
  • 首都のソウルでは今年だけで価格は20%上昇している。ソウル中心街から相当離れたSanwolkok地区で960スクエアフート(約89㎡)のアパートが23万7千ドルである。平均年収が3万ドルであるので、これは高い。

90㎡のアパートが年収の8倍ということになるがこれは日本よりはるかに高いのだろうか。ここで問題は韓国と日本の金利差だ。少し緻密な計算をしてみよう。まず日本・韓国の住宅ローンについて次の条件で借入可能額を計算しよう。

【日本の場合】年収600万円、期間30年、年利3%(固定)の借入、返済比率28%(返済金額÷年収×100、ただし計算上賞与返済なしで毎月均等返済とした)での条件で借入可能額   32.2百万円 ローン80%自己資金20%として購入可能物件価格 【40百万円】

【韓国の場合】年収354万円(3万ドルの円換算)、期間30年、年利6%(固定)、返済比率28%で借入可能な金額 13.8百万円 ローン80%自己資金20%として購入可能物件価格  【17百万円】 つまり韓国の平均年収は日本の6割だが、金利が高いので購入物件金額では42%程度の物件しか購入することができない。

記事にあった一般的なアパート237千ドル、約28百万円の物件は一般の人の購入可能金額を10百万円を上回っているということだ。 また記事によるとリバーサイドの人気の高い物件は同じサイズのアパートでも120万ドルはするということだ。以下記事を続けよう。

  •   物件価格の上昇は思惑を煽り更に物件価格の上昇を呼んでいる。新聞やラジオでバブルの声が上がっているので、住宅価格は実際の供給不足よりも思惑と感情で高騰するという懸念がある。住宅価格の問題は来年の大統領選挙の争点にもなりそうだ。
  • しかしエコノミスト達がいうには韓国では日本でバブルを引き起こした商業不動産に思惑買いは起きていない。また韓国では香港の不動産市場が90年代に崩壊したレベルまで物件は高騰していない。韓国の先例は英国に求めるのが良いだろう。
  • 韓国で住宅価格が上昇している主な理由は過去5年間平均平均成長率が5.5%という強い経済にある。韓国では豊かになると自分の家を買おうとする。この結果平均的な韓国人は富の8割以上を不動産の形で保有している。
  • 先月政府は方針をアパートの建設を増やすべく方針を転換した。しかし新規物件が市場に出てくる2009、10年頃までは住宅価格の上昇は持続しそうである。それ故多くの人々がうろたえている。

韓国では収入の伸びに比べて住宅価格の上昇が激しいことが分かった。恐らく資産インフレで利益を上げた人は海外投資を行なうかもしれないが、韓国への投資は良く市場を調べてから・・・ということだろう。日本は15年か20年遅れでアメリカを追いかけ、日本の何年か後に韓国がいるということなのだろうか。

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中国、暴動というリスク

2006年12月21日 | 国際・政治

中国の株式相場が戻ってきた。私も香港ハンセン銘柄に投資しているので、中国のことは気になり時々ウオール・ストリート・ジャーナルなどを読んでいる。というのは日本の新聞では全く中国の正しい情報が入らないからだ。もっともウオール・ストリート・ジャーナルなどの記事を読んで真実が分かるというとこれは疑問だ。つまりそれらの新聞は事実を報道していても、事実の単純な累積が真実になるとは限らないからだ。幾多の事実の山から真相を見つけ出すことは容易いことではない。そこに中国を理解する難しさと面白さがある・・・・・。それはまさに投資という行為の持つ本源的な面白さでもあるだろう。

最近読んだウオール・ストリート・ジャーナルでは香港の近く~といっても地図で見ると100km以上は離れているが~のDongzhou東洲というところで起きた暴動の話を報じていた。この記事の面白いところは事件の真相を求めてウオール・ストリート・ジャーナルが電話で東洲の住民に話を聞いているところだ。この取材精神、これがアメリカのマスコミの良いところだろう。それにしても中国モノの記事を読むのは手間を食う。というのは英語で書かれた地名や人名を中国語(といっても日本で使う漢字)に置き換えて理解する必要があるからだ。

さて東洲という人口数百人の小さな漁村で起きた事件というのはこういうことだ。去る11月中旬暴動を起こした数名の村人は役所を襲い、8名の下級官吏を捕まえ近所の寺院に彼等を閉じ込めた。というといかにも村人が暴挙を行なった様だがこれには原因があり、話は昨年の12月に遡る。

昨年12月数百人の村人は政府が農地を収容して発電所を建設することに抗議して道路の角に集まった。政府は~金額は不明だが~補償金を支払うと提案したが、農民達は金額が小さすぎると拒絶した。ある住民はフリーアジア放送(米国政府がスポンサーの民間放送)に「トイレットペーパーを買うにも足りない」補償金だと告げている。

住民と政府の衝突は流血に至った。新華社Xinhuaによると170名以上の村人がナイフや杖、ダイナマイト、火炎瓶で警察隊を攻撃し、警察隊はこれに発砲で対応した。新華社によると3人が死に5人が怪我をした。

余談であるが、インターネットで「東洲」を検索するとこの事件に関する日本語サイトにも出会うことができる。私は今まで知らなかったが人権上でも問題になっている事件の様だ。

この12月の抗議活動の後も村人達は「金を返せ。生活を返せ。」という登り旗を立てて政府に抗議していた。今年の11月初めに地方警察はChen Qian(銭辰?)という50代の男を抵抗勢力を組織したとがで逮捕した。11月9日に警察はChenを拘置所に入れたが、これが村人達の抗議行動に火をつけた。そして冒頭の8人の下級官吏の村人が拘束した事件につながっていく。村人達をChenの釈放を求めて官吏を捕虜にしたのである。そして約1週間後の夜銃を持ち犬を連れた数十人の警察官により官吏達は開放された。

以上が大体の話だが、小説的で結構面白く読める記事だった。何年か何十年後かに「水滸伝」のような小説が出来るかもしれないなどと想像させる話だ。

全体でどれだけの抗議行動があるのか数字を入手することはできないが、政府は10年前には約1万件だった「大衆事件」~地方での抗議活動を含むカテゴリーだが~が2004年には7万4千件に増加していると報告している。この主な原因は地方政府による土地の収用が主な原因である。ここ数年地方政府は農地に何であれ金を生むもの~工場、ハイウエイ、住宅開発等~を建設すると主張している。また地方官僚が開発業者から多額の金を得ても土地を使用している農民には僅かな補償金しか渡さないので抗議や暴動が起きている。それにしても中国の農民は共産主義革命で多少の幸福を手に入れることができたのだろうか?と疑問を感じさせる話だ。

ウオール・ストリート・ジャーナルによるといまのところ、各地の暴動の間に横のつながりはないということだ。私は中国共産党が過去の王朝のように農民の暴動で倒れると思うほど単純な循環史観を持っている訳ではないが、農民の暴動が~特にそれが大規模になると~中国のリスクの一つであることにはかわりはない。

ついでに中国のリスクを言えば、漢民族以外の少数民族の自治・独立問題、資源特に水資源の問題などがある。中国という巨大な市場の魅力とリスクの真実を捉えるというのは中々大変なことである。

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エコノミスト誌、1月利上げを予想

2006年12月20日 | 株式

日銀は昨日(19日)の金融政策決定会合で現行金利(0.25%)維持を決めた。これに関する日経新聞の記事は「来月利上げにも不透明感」という見出しで始まっている。一方エコノミスト誌は19日にネット上で「日銀は1月に金利を引き上げると予測する」という記事を発表した。その内容は後で見るとして、エコノミスト誌の記事は日銀の政策に強い影響力を持っているから結果としてエコノミスト誌の予想どおりになる可能性は高いだろう。

その記事の中でエコノミスト誌は日本経済の先行きに楽観的見通しを持っているので、同紙を信じるならばしばらく日本株には強気で良いかもしれない。ではどれ位の間強気で良いのか?と思っていると今日(20日)の日経新聞朝刊で立花証券相談役の石井久氏が次のように言っていた。

「いまの上昇相場は2,3年くらいしか持たないのではないか。日本の政府は約八百億円もの借金を抱え、人口減少という深刻な問題を抱えている。こういう国の経済が中長期で強くなるわけがない。」

「株というものはどこかで大天井を打つ。その局面で必ず持ち株を全部売ることを念頭に置いた上で投資をして欲しい」

実際私の経験でも株は買うより売る方が難しい。さてエコノミスト誌の記事のポイント。

  • エコノミスト誌は2006年のGDP成長率を前回予想2.7%から大幅に引き下げて2.1%に修正する。また07年から08年の成長率も前回予想の2%から若干引き下げて1.7%と推測する。
  • しかし成長率の引下げ見直しにもかかわらず、同紙は日本に回復は軌道に乗っているという見方を維持している。強い企業セクターのセンチメントは事業投資が成長のキードライバーになることを示唆している。企業の収益性も強い。財務省の調査によると第3四半期の製造業・非製造業の経常利益は前年同期比各々15.5%、13.5%と猛烈な勢いで伸びている。また12月の日銀短観では中企業と小企業のDIは各々17(前の四半期14)、10(同6)と改善している。
  • 賃金の伸びは鈍いがこれはコストの高い高齢者が退職するという人口動態の変化とパートタイマーが増えるという労働市場の規制緩和によるものである。また日銀が段階的に金利を引き上げることも日本の貯蓄者得に高齢者には良いことである。
  • 日本の輸出に関するアウトルックも好ましい。円は実質交換レート指数で1980年代半ば以降最も弱くなっており、輸出業者は引き続き利益をうけるだろう。

従ってエコノミスト誌によると日銀は景気の腰折れを気にすることなく、資産バブルを押さえ込むために金融引締め政策をとるべきだと述べる。

  • 福井総裁も最近の経済データが「幾分弱い」ということを認め、日銀が将来消費支出と物価に関する金利引き上げを必要とする統計を待っていると示唆している。しかしエコノミスト誌は日銀が1月に金融引締めを行なうという予想を維持する。その理由は日銀が頻繁に行なっているコメント、つまり超金融緩和政策が日本のアセット・バブルにインパクトを与えているのでフォワード・ルッキングな政策が必要という観点に立てば、最近の弱い経済データは金利引き上げの障害とはならない。エコノミスト誌は更に07年の後半に更なる金利引き上げを予想する。

以上がエコノミスト誌のポイントであるが、もし日銀が金利引き上げを実施すると私の見るところでは、長短金利の異常接近ないしは逆転が起こる可能性がある。勿論これは日銀が短期金利をどれ程引き上げるかにかかわっているが。また地域によってばらつきのある景気回復の差を一層鮮明にする可能性があると見ている。

その理由は一般の物価や賃金と株や土地の値段の動きは別のものであるということだ。つまり中国という巨大で安価な労働力を持つ国に隣接する日本では物価や賃金が急速に上昇することは起こりえない。一方過剰な流動性は一部の不動産や株に向かうので一定範囲のアセット・バブルが起こる可能性はある。しかし今は80年代のバブル期とは異なる。投資家はもっと利回りベースで投資を行なうので際限のないバブルは考えにくい。むしろ日銀の引締め政策は本当に低金利を必要とする地方企業等にボディブローのように効いてくるのではないだろうか?

このような問題を金利政策だけで解決するのは難しいかもしれない。日本の賃金や物価が上昇しないという前提のもとでアセットバブルを防止するには税によるタガなども考えるべきだろう。

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新興経済が経済理論を変える

2006年12月19日 | 社会・経済

「門前の小僧習わぬ経を読む」という諺があるが、私の場合これは当てはまらない。私は京都の寺で生まれ育ったが、親父が早い時点で坊主にすることを諦めたらしくお経を教えなかった。従って般若心経程度の短いお経すら覚えていないのである。ところが人生も後半に入ってくると仏教に関心が高まってくるから不思議なものだ。例えば最近読んだ玄侑 宗久氏の「般若心経」の中の「縁起」という言葉が心に残っていた。縁起というと原因結果の「因果律」を想起するが、実は「共時律」も含んだ概念だ。

此れ有るとき彼有り、此れ生ずるに依りて彼生ず。前半が共時律を示し、後半が因果律を表している。前置きがながくなったが、少し前のエコノミスト誌の記事によると中国・インド等の新興国の発展が先進国の物価や賃金に影響を与え、その結果伝統的な経済理論では説明できない現象が起きているという。これはまさに釈尊が説くところの「此れ有るとき彼有り」という新興国と先進国の間に共時律の関係が生じているのだろう。

少し長くなるかもしれないが、この記事は非常に良い記事なのでポイントを記録しておきたい。

  • 昨年新興国の経済は重要なマイルストーンに到達した。それは購買力平価ベースで計算して全世界のGDPの半分に到達したのである。これは歴史上最大の刺激だろう。というのは産業革命は世界の人口の3分の1しか巻き込んでいないが、この革命はほぼ全世界を巻き込んでいるからだ。
  • 新興国の輸出に占める比率は1970年の20%から43%に拡大している。彼等は世界のエネルギーの半分以上を消費し、過去5年間の原油需要の伸びの5分の4の原因となっている。また彼等は世界の外貨準備の7割を保有している。
  • また為替レートで換算すると彼等のGDPが全世界に占める割合は3割以下だが、購買力平価ベースでみるとシェアは半分以上になる。

しかし時間の尺度を少し大きく取ると中国やインドなど今日新興国といわれる国の方が現在先進国と呼ばれる国の経済規模ではるかに大きかった。19世紀後半まで中国とインドは世界最大の経済だった。従って彼等は新興国経済Emarging economiesと呼ばれるよりRe-emarging economies再新興国経済と呼ばれる方がふさわしいのだろう。

  • 経済歴史学者のマディソン氏によると1820年まで今日新興国と呼ばれる国々が世界のGDPの8割を産出していた。しかし1950年までに彼等のシェアは4割に減少していた。
  • しかし今彼等はリバウンドしている。過去5年間の彼等の経済成長率は史上最高の7%であり、先進諸国の2.3%をはるかに上回る。国際通貨基金は新興国の向う5年の成長率を6.8%、先進国のそれを2.7%と予測する。もしこのペースで双方のグループの経済成長が続くなら、20年以内に先進国が全世界の生産量の3分の2を占めることになる(購買力平価ベース)。

では新興諸国の経済発展は先進国にどのような影響を及ぼすのか?

  • 新興国のより強い経済成長は全体として先進国にとって良い結果をもたらすが、全員が勝ち組になる訳ではない。中国やその他の新興国が世界の貿易システムに組み込まれることで相対的なものの価格と労働・資本・コモディティ・商品・資産による収入に最大級のシフトをもたらしている。例えば中国や他の新興国が輸出する労働集約的な商品の価格は下落し、彼等が輸入する例えば原油価格は上昇する。
  • 特に新興諸国が優勢となることで労働と資本の相対的なリターンに変化が起きている。労働力がより豊富になることで先進国の労働者は交渉力を失い、それが実質賃金の引下げ圧力になっている。つまり先進国の労働者はグローバリゼーションの果実を分け前に十分預かっていない。これは一番スキルが低い労働者レベルに当てはまるばかりでなく、会計やコンピュータ・プログラマーといったより質の高い労働者層にまで当てはまりつつある。
  • しかし輸入制限等で仕事や賃金を守ろうとする国は相対的な低落を早める結果になるだろう。先進国政府が挑戦するべきことはグローバリゼーションの利益をより公平に国民に分配する方法を見つけることである。

またこの記事は先進国で起きている経済・金融上の事象で従来の理論では説明がつかなかったことを新興国経済のインパクトを考えることで相当説明できるという。

  • たとえば米国で債券金利が低いにもかかわらず、ドルの暴落が起きないのは新興諸国が外貨準備として米国債を積上げているということで部分的に説明できる。原油価格の上昇は供給の制限よりは新興国の強い需要により引き起こされているので、過去よりは世界の経済成長に与える害は少ない。またインフレーションのインパクトは新興国からの輸入品の価格下落でずっと相殺されている。したがって先進国の中央銀行にとって過去に比べるとはるかに低い金利でインフレを押さえ込むという目標を達成することができる。これらのことは経済政策において革新的な思考方法を求めている。政府はグローバリゼーションで利益を失う労働者を補償するため税と社会保障システムを強化する必要があるかもしれない。
  • 金融政策も刷新する必要がある。新興諸国は安い商品と安価な労働力を供給するので、インフレ対策に貢献する。これにより中央銀行は歴史的に低い金利を維持することが可能になっている。

確かに日本で中々消費者物価が上昇しなかったり、賃金が中々上昇しない理由は隣に中国という巨大な労働力を持ち安価な商品を供給する国があることでかなり理解できる。では我々はこの時代をどう生きればよいのか?

これはその人の年齢によって異なる。若い人であれば新興諸国の安くてしかも優秀な労働力に負けないスキルを身につけないといけない。中国人にしろインド人にしろ地頭は極めて優秀だ。競争力のある人材になることは決して易しいことではない。若い人にとっては大変な時代だと思う。

一方我々のように一定年齢に達し、個人で多少の投資余力の生じた年代のものはこれら新興諸国の株式に投資して見るのが良いだろう。といって私自身新興国のエクスポージャーは中国でほんの少ししかとっていないのだが。しかし投資に遅いということは全くないだろう。

グローバルに通用する企業(集団)を狙って、あるいは投資信託のような集団投資スキームを使って、少しづづ日本を含む先進国に振り向けてきた投資をこちらに回す時期が来たようだ。先進国でグローバリゼーションのメリットを受ける最も良い方法は投資をすることなのだから。

時には釈尊が説かれた共時律「此れ(新興諸国)有るとき彼有り」などを思い出しながら、彼等と共存することを考えるのも悪くはないだろう。もっとも釈尊は「此れ無きとき彼無し」と対句で述べられている。中国やインドが躓くと日本がひっくり返る時がくるかもしれない。

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米紙、日興の上場廃止を強く示唆

2006年12月19日 | 株式

日興コーディアルグループの不適切な利益計上問題が大きく報じられている。同社は有価証券報告書を訂正し、連結利益を25%、118億円減額する。東京証券取引所は日興株を上場廃止の可能性がある監理ポストに割り当てた。・・・・・というのが日経新聞などの論調だ。

実は私は日興コーディアルとは長い付き合いがある。株の売買は日興コーディアルを通じて行なうことが多いので多少の株を預けている。更に秋口まで同社の株を僅かながら保有していた。その株については余りにパフォーマンスが悪く、回復見込みがなさそうなので損を出して売り、国際優良銘柄に乗り換えた。無論のその時点で日興の不正経理の問題を知っていた訳ではなく投資銘柄の入れ替え作戦以外の何者でもなかったが、今思うと実にラッキーだった。以上のようなことから日興問題についてはかなり関心が高くウオール・ストリート・ジャーナルの記事にも目を通してみた。

ウオール・ストリート・ジャーナル(アジア版オンライン)の見出しは「日興コーディアル、会計処理問題から上場廃止の可能性あり」である。原文ではNikko Cordial may face delisting over accounting practicesであり、日経の見出しが「課徴金、5億円」であるのと相当異なる。ウオール・ストリート・ジャーナルにこう書かれてはまともな値段で日興株を買う外国人はいないだろう。

先日来日した前ニューヨーク市長のジュリアーニ氏によれば「サーベンス・オクスレー法はショック療法」ということだ。米国ではショック療法を乗り越えた大企業が株高を牽引している。今ウオール・ストリート・ジャーナルが日興コーディアルの上場廃止を示唆する記事を書いているのは、日本の内部統制強化のためスケープ・ゴートを求めていると見て良いだろう。

ウオール・ストリート・ジャーナルは日興が上場廃止になると、追加資金を調達することが困難だと論じている。投資銀行業務というのは企業顧客から多額の株式や債券を引き受け、個人投資家や機関投資家に販売する仕事なので大きなバランスシートが必要という訳だ。つまり日興の上場廃止はその投資銀行業務の廃業を意味する。これはゴールドマンやリーマンブラザースという外資系証券会社の商売がますます増えることを意味するだろう。ウオール・ストリート・ジャーナルがそこまで狙っているとは思いたくないが。

ところで日興コーディアルにはシティグループが11%出資している。シティが今後どのような動きをするか・・・などということも興味あるところだ。

また今後の株式投資では「内部統制リスク」というものを考えないといけないことを改めて認識した。内部統制には人手と費用がかかる。このコストは企業規模に比例するものではないので、企業規模の小さな会社ほど負担が大きい。逆に言えば大きな会社は日本版SOX法に対応する力があるので内部統制が有効に機能する可能性が高いと考えてよい。今後は内部統制プレミアムなどが発生するかもしれない。

ところで余談だが、日興コーディアルのコーディアルとはラテン語に由来することばで「心から」という意味だ。CordialのCorが「心」でalが「から」である。しかし「不正経理は一社員がやったこと」などと経営トップが言っているようでは、コーディアルの名を汚すと言われてもしかたがあるまい。

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