惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

アスパラ問題

2013-04-09 21:03:59 | サイエンス
 思えばアスパラ問題は頭の隅で(と同時に体の下の方でも)ずっとくすぶりつづけていたのだった。

 それが再燃したのは、岸本佐知子さんの『なんらかの事情』(筑摩書房)所収の「友の会」なるエッセイを読んでからのこと。
 岸本さんは、子どもの頃から年に数回、おしっこが奇妙に匂うのを気にしていたが、ついにそれがアスパラガスを食べた後の現象であることに気づく。
 しかし賛同者が得られずにいたところ、或る日、飲み会の席で同じことに気づいた仲間とついに遭遇する。
 そこで2人は「アスパラ友の会」を結成し、「会員を増やし人々の蒙を啓く」ことを誓ったのだが、数日後、その同志から「わが国にはアスパラ尿者が人口の1割程度しか存在しない」ことを教えられ、「アスパラ秘密結社」に名称を変更したという。

 つまり私もこの秘密結社への入会資格があるのですが、問題は「尿者」と「非尿者」の違い。
 ある説によると、遺伝的に保有する酵素によって、匂いの素を製造できる人とできない人があるというし、またある説では、そうではなくて、できた匂いを感じることのできる人と感じない人がある、というのです。どっちやねん。

 結局、まだ私にはよくわかっていないのですが、とりあえず折衷案というか、両者の意見が盛り込まれた大阪本場青果卸売協同組合の説明を引いておきます――

 匂いの原因となる化学物質は、硫黄を含むS-メチルチオアクリレートとS-メチル3-チオプロピオネートという物質で、トイレの悪臭の元であるメルカプタンの一種だそうです。
 この匂いのするおしっこを出す人はその原因となる遺伝子を1個か2個持っているそうです。
 このため約40%の人のおしっこが匂うことになります。
 2個の遺伝子を持つ人は、さらに刺激的なにおいを出すようです。
 2個の遺伝子を持つ人は、約6%の人たちだけです。
 又その匂いを鋭敏に感じることのできる人は、全体の約10%です。
 この説によれば、強烈な匂いを製造しながら、本人は気づいていないケースも存在するということになりますね。