惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

横田順彌さん(その2)

2019-01-17 21:15:35 | ひと

 亡くなられた横田さんの仕事についての感想。昨日の続きです。

 笑いに意味を与えようとせず、自分の感覚に忠実だった横田さんですが、古典SFの研究についても、似たようなことがいえます。
 どういうことかというと、従来の通説や、権威の意見に惑わされることなく、自分が感じて面白いと信じるものを評価し、世の中に伝えようとしたのです。

 そのためには、まず、古い作品を読み漁り、「古典SF」を発掘してゆくこと。自分の嗅覚だけを頼りに古書の海に潜り込んでゆきました。

 その成果が『日本SFこてん古典〈Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ〉』。

 珍妙な学習参考書『炭素太功記』や山田孤帆という人の『吾輩は猫被りである』などというあきれた小説を教えてくれただけでも凄いのですが、そうした作品を楽しむ姿勢が、何よりも見事でした。たぶん、何人もの人の、世の中への対処の仕方を変えてしまうほどのインパクトがあったと思います。

 横田さんの「古典SF」への興味は生涯、薄れることなく、その後も研究を続け、『近代日本奇想小説史』を結実させます。権威とは無縁の横田さんでしたが、これだけの成果を世間も無視することはできず、日本SF大賞特別賞・大衆文学研究賞・日本推理作家協会賞が授与されたのでした。

 他人の意見に惑わされず、自分で面白さを見つけてゆくこと。それを教えてくれた横田さんは素晴らしい「教師」でした。ただし、この教師はちっともエバラなかったんですよねぇ。