惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

ミハル・アイヴァス講演会

2015-11-22 21:43:37 | アート・文化

 アボカドのピンポン玉のような種を半分水に浸からせて水栽培しています。9月末から始め、今は根が10センチぐらい伸び、種は真半分に割れかけています。隙間から芽がのぞいているみたい。
 で、根が容器の底につきそうになったので、もっと深い容器に移し替えようとしていて大失敗。根の出た種を底に落とし、傷つけてしまったのです。この後、うまく育つかどうか。

 さて、今日は昨日の記事より1日さかのぼり、18日(水)の夜のことを。

 チェコの現代作家にミハル・アイヴァスという人がいて、『もうひとつの街』と『黄金時代』の2作が翻訳されています(河出書房新社刊)。翻訳は阿部賢一さん。
 チェコらしい幻想味ゆたかな素晴らしい作家で、特に『黄金時代』は大のお気に入り。この度、阿部さんが准教授をつとめておられる立教大学の招きで来日し、18日の夜、公開講座がもたれたのです。

 テーマは「『プラハ的なるもの』とは何か? プラハの作家たちの共通のモチーフをめぐって」。
 グスタフ・マイリンクやカフカ、リルケ、マックス・ブロート、レオ・ペルッツなど、プラハの作家の作品をアイヴァスさん流に読み直す試みなのですが、大変な構想力をふるった議論で、聴いているうち、これらの作家の作品とプラハの街を素材にしたアイヴァスさんの新作小説を語ってもらっているような気になりました。

 アイヴァスさんによれば、プラハの街は「上」と「下」、そしてさらに底部を流れる「川」という構造をなしており、この地理的特徴がプラハ人の意識の構造と照応していることが、小説から読み取れるのだそうです。
 「上」はプラハ城のある丘で、ここから眺める街全体の光景は、世界の秩序と人間の生の意味を見ることにつながっている。
 「下」は迷宮に似た旧市街・ユダヤ人街で、混沌としていながら、抜け道が意外な出口へと至ることに見られるような、思わぬ秩序が隠れているとか。
 さらに低いところを流れる「川」は、無形の要素であり、そこに溶け込むことで問題は消失してしまう。
 ――というのが、簡単な私の受け止め方だったのですが、誤解や短絡があるかもしれません。

 こうした分析の上に立って、アイヴァスさんは「プラハ的なものとは、常に秩序の探求を問題にしていて、そこには逆説と両義性がつきものである。そして、それらの逆説と両義性は統合されるのではなく、繊細な和解によって解決される」と言っておられたように思います。
 難しい議論ですが、地理と歴史と人物と小説とを練り混ぜて大きな構造物を組み立ててゆく感じで、凄いなぁと感歎しました。もっと多くの作品を読みたいものです。ぜひ、続けて翻訳を。



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2 コメント

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チャペック (イシバシ)
2015-11-23 04:16:27
ご無沙汰しています。石橋です。

アイヴァスさんのお話というのは、チャペックやハシェクにもあてはまりそうな気がします。アイヴァスさんのお話にも二人について触れるところはありましたか?
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>石橋さま (森下一仁)
2015-11-23 10:53:19
石橋さん、おひさしぶり(^^♪

そう、チャペックたちへの言及があるかなと期待したのですが、今回は触れられませんでした。
もっとも、時間の関係で話は予定の1/3に終わったそうなので、残された部分に登場するのかとも思います。どこかで読めるようになると良いのですが。
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