惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

『念力図鑑』

2005-08-26 20:27:19 | 本と雑誌
 笹公人(ささ・きみひと)さんの第2歌集『念力図鑑』(幻冬社)を読んで、笑った、笑った。
〈SFマガジン〉でいくつか読んでいるはずですが、こんなにギャグっぽかったっけ。

 本では1行9文字の縦書きですが、ここでは仕方なく横書きにさせていただきます。

尿療法の本立ちなら
ぶ書斎にて出された
ビールをじっと見つ
める

 これはとてもわかりやすい。

 こんなのも――

メールでは加藤あい
似のはずだった少女
と寒さを分かつ夕暮

 「わたしってぇ、よく加藤あいに似ているとかぁ、言われるんですぅ」などと書いて来たんでしょうか。それで会ってみたら……。
 本当はどういう顔立ちの少女だったのか、色々と想像せずにはいられません。
 しかも2人で「寒さを分かつ」んですからねえ。普通のカップルなら「温もりを分かつ」ものだけど、いったいこのカレとカノジョはどうなっていたのか。実に気の毒。

 次のは時節にぴったり――

信長の愛用の茶器壊
したるほどのピンチ
といえばわかるか

 ワタヌキさんやカメイさんの顔が思い浮かんでしまいます。いや、ヤシロさんやキウチさんの方が、この場合は適当でしょうか。コイズミ信長の「茶器」とはもちろん……。

 ユーモア主体のものを引用してみましたが、ホラーや幻想もたっぷり。フィクションの世界を短歌にして、こんなにも鮮やかにキャラクターや場面が浮かぶことに驚きました。
 それはもちろん「本歌」となる物語が共有されているせいではあるのですが、これらの歌を詠んでいる主体そのものが虚構化されることで、作品が作者個人から離れ、多くの人に届きやすくなっているのだと思いました。普通の短歌は「私」=「作者」なので、これは方法論として実に画期的。
 この手法を使って、さらにどんな試みが可能なのか、興味がわきます。


野川

2005-08-25 20:34:58 | まち歩き
 前線と台風の影響で、時折り激しい風雨。
 夕方、野川へ散歩に出かけましたが、小やみの時はまだいいものの、雨が強い時は大きい木の陰などでじっとしていないと、あっという間に全身びしょ濡れになってしまいます。もちろん傘は差しているけれど、風に混じって吹き付ける雨粒と地面から撥ねかえるしぶきがもの凄い。一時は、濡れながら引き返すしかないかと覚悟しました。

 けれども、さいわい間もなく雨は小降りに。そうするとすぐに犬の散歩やウォーキングの人たちがワラワラと遊歩道に現れます。今までどこに隠れていたのでしょう? 私同様、どこかで雨宿りしていたのでしょうね。

NOGAWA0508  これが今日の野川の様子。
 茶色く濁って増水した流れの脇でシラサギが小魚を狙っています(クリックして大きくしてみてください。画面中央手前)。けっこう良い漁になるようで、数分、立ち止まって見ている間に3匹ほどを餌にしていました。

 21日の日記に川端裕人さんがコメントしてくださっていますが、多摩川水系のこのあたりには野川と仙川という支流があります。
 仙川はハケ(崖)の上を流れ、多摩川と合流する手前の野川に注いでいるのですが、水源と合流点の標高差が大きく、大地を深くえぐった谷になっています。そのため岸が高く、さらにその岸をコンクリートで固めたので、川端さんがおっしゃるように「ただの水路」と化してしまったのですね。
 一方、野川の方はハケの下を比較的ゆるやかに流れているため、あまり岸が高くありません(そのぶん、昔は氾濫しやすかった)。だから、人と水との距離が近いのです。川岸もゆったりとってあって、散策や川遊びを楽しむことができます。
 野川のそばに暮らせて、私は本当にしあわせ(川端さん、ごめんなさい)。


賞金100万円

2005-08-24 20:02:32 | 日記・エッセイ・コラム
 月曜日には高知へ日帰りで帰省したり、あれこれ取り込んでいて日記が書けませんでした。
 四国はずっと渇水状態だったようですが、私が帰る前に2日ほど雨が降り、窮地は脱したといっておりました。
 といったら、今度は台風11号が……。

 スタートが近づいてきた国書文芸カレッジ、私の講座は成立することになったようです。申し込んでくださった皆様、どうもありがとうございます。
 とはいえ、まだまだ教室には余裕があります。興味がおありの方、よろしかったらぜひ。受講生の優秀作には社長が100万円用意して待っています。
 私の担当するSF創作講座は第2・4金曜の午後7~9時。9月は9・23日となります。


『今ここにいるぼくらは』

2005-08-21 20:24:55 | 本と雑誌
 夕方、ママチャリを漕いで多摩水道橋まで。
 家から7~8キロかな。途中まで野川を下り、それから住宅街の道をくねくねたどって世田谷通りに出た。世田谷通りが多摩川を渡る橋が多摩水道橋であります。

IMAKOKO  目的はこの写真を撮ること。
 ちょっとこれと見比べてみてください。川端裕人さんの『今ここにいるぼくらは』(集英社)のカバー(撮影は横山孝一さん)です。似てますでしょう?

 この本を見た時、「あ、これはあそこだ!」と思ったのでした。その後、日にちは経ったけれど、ようやく確認に出かけたというわけです。間違いありませんでした。橋のほぼ中央から上流を見たところです。

 中洲がずいぶんと大きくなっていますね。水が出て表土が流されたのか、草もなくなっています。中央にそびえる塔は国領駅北口のビル「コクティ」。何本か団地の給水塔も見えます。

 この本の感想は〈遊歩人〉に書きました。9月号に掲載されると思いますが、とても良かった。
 多摩川は出てこないけれど、川が重要な役割を果たしているのは『川の名前』と同じです。遠い世界へと誘う通路なんですね。


レンゲショウマ

2005-08-20 21:40:22 | まち歩き
 起きると今日も暑そう。

 突発的に今日は夏休みにすることに決め、奥多摩の御岳山に出かけました。
 片道約50キロ。バイクで1時間半ぐらいの道のりです。
 お昼過ぎに御岳山ケーブルカーの下の駅(滝本駅)に到着。駐車場はバイク1日500円。谷川の風に吹かれながらおにぎりを食べてから、ケーブルカーで上の御岳山駅(標高828メートル)まで登りました。所要時間6分。
 今日はこの夏いちばんの混雑とかで、通常20分置きのところ10分間隔で運転していました。それでも午後3時頃下った時には列に並んで1便待ちの状態。思わぬ山上のラッシュでした。

 御岳神社山門前は土産物店や民宿などが建て込んでいて、一大観光名所の様相。ここでもとても山の上とは思えない印象を受けました。
 本当はハイキングコースを歩いて七代(ななよ)の滝とか「ロックガーデン」とかをまわりたかったのですが、同行者の体力を考えて目的をレンゲショウマ鑑賞に変更。ケーブルカーからリフトを乗り継いだ展望台付近の山腹に群生しているレンゲショウマが、ちょうど今、見ごろになっていたのです。普段よりはひと月近くも遅れての開花だとか。春が遅かったせいでしょうか。
RENGE0508  本州の深山にひっそりと咲く花だといいます。清楚でありながら、華やかさを秘めている。高山植物のようなたたずまいですね。
 大きく開いているのはガク片で、筒状で先が紫色になった部分が花弁。全体の大きさは直径5センチぐらいでしょうか。けっこう大きい。
 今はつぼみが次々と開き始めたところ。今月いっぱいは見ごろが続きそうです。(画像をクリックすると大きくなります)