金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ギリシア、債務が返済できないなら今デフォルトする方が良い?

2011年09月20日 | 金融

私は別に全面的にアメリカ人が優秀だなどとは思わない。しかし一つ優れた点があるとすると「現実を直視し、問題を先延ばししない」という点だと思っている。経済的に見ると事業に成算が見込まれない時は、延命装置を外し、破産を選択する。無論これは時として武力行使につながったり、ハードランディングを招く危険性は伴うが。

ニューヨーク・タイムズはギリシアのデフォルトの可能性を論じているが、その論調も同じようなものだ。「ギリシアは断崖に近い」という記事の中で同紙は「私の見解ではギリシアは債務を弁済できる見通しがつかないので、今デフォルトすることが、非常に同国の利益にかなう。支払能力のないギリシアが債務をリストラしなければならないとすれば今それを行なうのがベターである」というIMFの前エコノミスト・Lachman氏の言葉で記事を結んでいる。

もっとも同紙はギリシアのデフォルトが引き起こす影響について軽視している訳ではない。金融危機はつねに予期せぬ結果を招くし、多くの人々が巻き添え被害あると予想しているからだ。10年程前に起きた国家のデフォルトは金融危機の感染を引き起こさなかった。2001年にデフォルトを起こしたアルゼンチンの債務総額は820億ドルで98年にデフォルトを起こしたロシアのそれは790億ドルだった。これに較べてギリシアの公的債務は5千億ドルと規模が5倍以上だ。またギリシアがデフォルトを起こした場合、プレッシャーを受けるイタリアの債務はギリシアの5倍である。ギリシアのデフォルトの影響は過去の経験からは推測できないものがあるだろう。

このような懸念があるからギリシアはデフォルトを避けようとして、更なる緊縮プランの立法化に向けて他の欧州諸国とともに必死になって動いている。

だが幾ら政府の支出を削減しても山のような債務を支払うことはできない。財政支出の削減は既に経済を収縮させている。その借金を減らすにはリストラして元本の一部を免除するしかないだろうというのが同紙の基本的なスタンスだ。

市場でギリシアの国債は額面の4割以下で取引されている。ということは多くの投資家はギリシア国債のリストラが行なわれる場合、額面の6割程度の債権が切り捨てられる可能性があると判断していることを意味する。

記事はシティグループのチーフエコノミスト・Buiter氏の二つのデフォルトシナリオを紹介している。一つはギリシアが「民間銀行に額面の60%から80%の負担を負わせる一方、欧州連合やIMFなど公的機関への支払を続けることでユーロ圏内に留まる」というもので、この場合はテクニカルにはデフォルトだが、ギリシアは無条件に債務支払を拒絶する訳ではないので、理論的には危機の伝染は押さえ込める。もう一つは「ギリシアがユーロ離脱を決意するかあるいは離脱を迫られるというもので、債務の償却は100%に近づき、かつ国際金融市場に与える影響はより深刻になる可能性が高い。

☆   ☆   ☆

返済することが出来ない程、借金が積みあがってしまうとデフォルトして債務の切捨てをするしかない・・・というのが現実的対応というものなのだろうか?

ギリシアにとってユーロ圏に留まり、経済力の強いドイツなどと同じ通貨で競争していてはいつまでも経済成長は望めず、借金の返済の目処は立ってこない。国際金融市場に与える悪影響は大きいが、ユーロ離脱はギリシアにとって「平価切下げ」効果があり競争力の回復につながる。

ギリシアの指導層がタイムズの記事を読むとすれば、彼等はなんらかの示唆を受けるのだろうか?

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マルキール氏、新興国株式投資のメリットを強調

2011年09月20日 | 投資

「ウォール街のランダム・ウォーカー」の著者バートン・マルキール氏が、FTに「エマージング株式はより高いリターンと少ないリスクを提供する」Emerging stocks offer better returns and less riskというエッセーを寄稿していた。

個人的にいうと、欧州のソブリン問題の出口が見えない中、株式投資の意欲は湧かないが、そこは機関投資家向けのメッセージということで理解した。つまり年金基金等の機関投資家の場合、運用環境の良し悪しにかかわらず流入してくる資金を運用する必要があるからだ。

著者は「異なる国の間の相関関係は高まっているが、株式投資のパフォーマンスには大きな差がある。これから先、異なる国での株式投資パフォーマンスに大きな影響を与える要因は3つある」「それはその国の政府と民間の債務レベル、人口動態の動向、資源である」と述べる。

債務について、IMFはG20メンバー国の政府債務(対GDP比率)は、2010年の100%から2015年には125%に拡大すると予想している。これは氷山の一角に過ぎず、地方政府の債務や積立不足のソシアル・セキュリティ(国民年金の一種)を加えると先進国の債務負担は膨大なものである。

これに較べて新興国の公的債務はGDPの3分の1以下で2015年までには4分の1に低下すると予想される。また公的債務の積立不足は先進国に較べると極めて小さく、家計のバランスシートも健全である。

人口動態も新興国に有利である。人口統計学者が使う依存率、つまり退職者と現役の比率でみると、日本では2025年までに比率は1対1になる。イタリア、フランス、ドイツでも1対1に近づく。このように退職者の現役依存度が高まることと国の債務の増加や成長鈍化の間には相互作用がある。

資源の問題については豊富な天然資源の供給と価格下落の時代は終わった。中期的に見るとコモディティ価格が上昇する可能性は極めて高い。このことは石油や金属だけでなく、農耕地や豊富な水資源を持つ国も優れた長期投資のチャンスを持つことを意味する。

最後にマルキール氏は「新興国投資には政治的リスクが伴うが、米国・欧州・日本には異なったリスク~そしてそれは新興国のリスクより高い可能性がある~がある」「私は大部分のポートフォリオが世界の中でもっともダイナミックな成長をとげる市場を著しくアンダーウェイトしていると思う」と結んでいる。

☆   ☆    ☆

パッシブ運用の優位性を説いたことで有名なマルキール氏が何故この時期に新興国投資のメリットを強調したのか背景は分からない。ただ「資産配分の違いがポートフォリオのパフォーマンスの違いの主な要因となる」という氏の考えからすると、現在の相場は新興国株式の比率を高めるチャンスと考えられるのかもしれない。

この夏明らかになってきたことは、欧米経済の一層の減速とそれを織り込んだ長期金利の低下である。米国に続いてドイツの長期国債も2%水準となってきた。長期金利は株式投資を含む資産運用利回りの目安となるもので、平均的は資産運用利回りは国債金利+アルファとなる。つまり低成長と低金利下、先進国で資金運用で高いリターンを期待することは極論すると不可能になったというべきだろう。

☆   ☆   ☆

では先進国から新興国に投資して高いリターンを持続的に上げることができるか?というとこれまた疑問を感じざるを得ない。新興国市場に有利な資産運用機会があると、多くの投資家が認識した時には大量の資金が流入し、バブルが発生するからである。また為替リスクの問題もある。「本国での期待利回りの低下を新興国投資でカバーする」というのは、少しリスキーである。自国の成長率と金利の低下に合わせて、期待利回りを下げるというのが賢明な姿勢なのだろう。

慶応大学の池尾教授は「質素で退屈で憂鬱な低成長の時代を甘受せざるを得ずそれは相当期間続く」と述べている。まったくぱっとしない話だが現実はそのようなものかもしれない。

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ブラッスリー ル・リオン、空いていて美味しい不思議な店

2011年09月20日 | レストラン・飲み屋

先週末池袋で映画「ライフ」を見た後、昼飯を食べに池袋西武の8階・ダイニングパークに寄った。うなぎか天ぷらを食べる予定だったが、三連休なのでこれらの店はもの凄くこんでいた。1時間待ちのプラカードを持った店員さんが、行列の最後に並んでいる。日本食は諦めて、中華でもイタリアンでも良いと思って、空いている店を探すが店の前には行列が出来ていて、とても簡単には入れそうにない。

半ば諦めてダイニングパークの西の端まで来た時、空いている店を見つけた。ブラッスリー ル・リオンという「カフェ」である。黒板にランチメニューが書いてある。だが店内はガラガラだ。その隣の店は行列が出来ているのだが・・・・

回りの店が混んでいる中で空いている店に入るには多少勇気がいる。「不味いからお客が少ない」のではないかとか「高いのではないか」などと疑心が起きる。

だがランチメニューの大山鳥のグリルを食べてこれらの心配は杞憂に終わったことが分かった。鳥のモモ肉はしっかりしていて美味しかった。付け合せのジャガイモとチーズも良かった。パンはフランスパンをオリーブオイルで頂いた。1,300円の値段からすると上出来である。

で、どうしてこの店空いていたのだろうか?推測するに主食となるご飯がないからではないか?それと「カフェ」というのが池袋っぽくなくてちょっと敬遠されるかもしれない。表参道辺りなら人気の店になりそうだが。

僕らは食べなかったけれど、ショーケースにあったイチゴのタルトでも食べてコーヒーを頂くとかなり満足度の高いランチになると思う。

空いていてもお値打ちなお店があったので紹介した次第である。

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信用懸念でシーメンスは欧州中銀へ預金シフト

2011年09月20日 | ニュース

民間銀行の信用リスクが高まる中、ドイツのコングロマリット・シーメンスが2週間前にフランスの銀行から預金を欧州中銀に移したというニュースがFTに出ていた。

移し元の銀行名は明らかでないが、移した資金は最大60億ユーロということ。中央銀行は事業会社の預金は受け入れないが、シーメンスは傘下に銀行を持っているので、その銀行経由で欧州中銀に預金をした。

シーメンスが預金を移したのは安全性の観点だけではない。欧州中銀の預金の方が市中銀行より高いからだ。欧州中銀の1週間の預金金利は1.01%で市中銀行のオーバーナイト金利0.95%より高い(1週間ものとオーバーナイトを比較するのはおかしいがFTの記事のとおりなのご容赦を)。

欧州中銀は高い金利で預金を集め、南欧諸国の国債購入を続けている。欧州は今週も緊迫した状況が続きそうだ。

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