金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ほつれが目立ち始めた「欧州の結婚」

2012年04月27日 | 国際・政治

昨日(4月26日)S&Pはスペインの長期格付を2ノッチ引き下げBBB+とした。S&Pは「政府の一般純債務がGDPの80%を超えると更なる引き下げもありうる」と述べた。S&Pがスペインの格下を行なった理由の一つは経済成長の見通しの悪さだ。少し前まで同国経済は2012年中に実質ベースで0.3%拡大すると予想されていたが、現在の見通しでは1.5%のマイナスである。

☆  ☆  ☆

スペインの格下は予想されていたイベントの一つだが、ほつれが目立ち始めた「欧州の結婚」の一つの事例である。ニューヨーク・タイムズのコラムニスト・Norris氏が「ユーロ(欧州通貨同盟)が悪い結婚のようなものだとすると、破滅的な離婚を避けることができるのか?」という疑問を述べていた。そのコラムはフランス大統領選挙で社会党のオランド党首が僅差でサルコジ大統領を破り、5月6日の決選投票が決まったこと後で書かれたものだった。

今の欧州の問題の一つの核心は「ほとんどドイツの一人勝ち」というところにあるというのがNorris氏の指摘だ。単一通貨の下では、経済的に弱い地位は「通貨切り下げ」で競争力を回復することはできない。ドイツ連銀のある幹部は「競争力が弱い国は構造改革により内需を抑え競争力を強め、輸出を増やさざるをえない」と主張し、ドイツが大きな負担を背負うことを避けてきた。

だが風向きは変わりつつある。ドイツの忠実な支持者であったオランダで、右翼の自由党が財政緊縮策の継続に反対し、内閣が総辞職した。欧州では財政緊縮路線と景気刺激路線の対立が高まりそうだ。

☆   ☆   ☆

以下はまったく余談なのだけれど、通貨同盟が結婚にたとえられたので、思い出したのが「江戸時代の結婚関係」だ。正確にいうと典型的な「江戸に住んでいた町人の結婚関係」なのだが。

杉浦日向子氏の「江戸塾」(PHP文庫)によると「江戸のお父さんは食費を家に入れるだけで大きな顔ができ、あとは飲む、打つ、買うなんでもOKです。・・・・専業主婦というものはほとんどいない。主婦はみな何かしらの職業についている、養育費や医療費、雑費は女房の負担できれいな髪飾りや着物も全部女房が自分で買う」という文章が出てくる。

これをユーロとのアナロジーで考えると、経済状態が悪い中でお父さん(ドイツ)だけが一生懸命働いて、お金を貯めて女房連中(南欧諸国など)には新しい着物は買うな、倹約しろと言っているのが現在の状態だ。だがこの倹約疲れから反抗を起こし始めたのが、女房連中。軍配はどちらに上がるのだろうか?

話を江戸の町人に戻すと、小金を稼いだ町人は宵越しの金を持たずにパッパと使っていた。だから文化が発達し、文化が発達したのでお金を使う機会も増えたという消費循環があった。「この世は一度限り、使える時にパッパとお金を使う」というライフスタイルも悪くないだろう。それも結婚の一つの安定した形であれば。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする