今日(6月16日)の読売新聞朝刊によると、政府与党は安保関連法案の今国会での成立を目指し、国会の大幅会期延長を決めた。この記事を読む前にWSJを読んでいると、Japanese Legal experts criticize Abe's defense push「日本の法律専門家たちは阿部首相の安保法案ごり押しを批判」という記事にであった。
記事は「安倍首相は4月の訪米時に双務的安全保障条約bilateral security agreementにおいて日本が今までより責任を担うことを可能にする法案を夏までに通過させると米議会の前で約束したがその期限まで数週間と残すばかりとなった」「しかし専門家たちは、安倍政権を全般的には支持する専門家さえ、議論の多い法案を強行採決steamrollingすることは、選挙民の反感を買う可能性があると述べている」と報じていた。
Steamrollとは「蒸気ローラーで平らにする」という意味だが、転じて「強い力で圧倒する」という意味で使われる。Steamrollingと名詞になると「強行採決」という意味だ。
読売新聞の報道が正しければ、強行採決という事態は避けられるかもしれない。安倍政権を支持し、そして安保関連法案を支持する人(私のその一人なのだが)でも、何故議論を尽くさず強行採決をするのか?ということに疑問を感じる人は多いはずだ。その答えが「訪米時に米議会で夏までの法案可決を約束してきたから」では納得できない人が多いだろう。
ただし議論は時間をかければ良いというものではない。良識ある人たちが「なぜ安保関連法案を今立法する必要があるのか?」という問題の本質について、本音のところを理解する必要があると私は考えている。その一つがWSJがいうBilateral security agreementだ。米国は安保条約は双務的なのだから、日本がもっと防衛問題に踏み込まないと米国は中国などの潜在的脅威に対して、日本を防衛することができない(公的に明言したかどうかは別として)とシグナルを送っていることを理解することが重要だ。
その理由は中国の経済力・軍事力が強くなっていることに加え、シェール革命で原油生産力が高まった米国にとって長期的には中東産油国への依存度が低下し、東アジアのシーレーン防衛の意義が低下していることがあると私は感じている。
安保関連法案の審議に専門家の意見を求めるのであれば、憲法学者の意見に加えて、国防問題の専門家(入ればの話だが)も合わせて聞く必要もあるのだろう。