金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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社外取締役義務化で出世方法が変わる?

2015年06月09日 | うんちく・小ネタ

少し前にある上場企業から株主王会招集通知と同時に「定時株主総会招集ご通知の正誤表」なるものが送られてきた。定時総会の時期は今月(6月下旬)。正誤表の内容は「取締役3名選任→取締役4名」にするもので、追加する取締役は社外取締役だ。

裏の事情は詳しくは分らないが、東京証券取引所の「社外取締役を2名以上設置すること」を求めた方針が今月から実施されることに対応したことは間違いない。この会社が「株主総会招集通知と招集通知の正誤表」を同時に送ってきたことは、招集通知印刷時点では社外取締役が確定していなかったことを意味するのだろう。

社外取締役2名以上設置が事実上上場企業の義務となると、社外取締役の人材市場はかなりタイトになっていることが想像される。

東証1,2部上場会社約23百社の内、既に社外取締役を設置している会社は約17百社あるが、その内2名以上の社外取締役を設置している会社は5百社強だから、単純計算をしても、約18百名近い社外取締役の追加選任が必要となりそうだ。

社外取締役には、幅広い知見に加えて「株主総会、更には発言力を増している機関投資家を納得させる経歴」などが必要だから、限られた有名人が複数の企業の取締役を兼任するケースが増えそうだ。

例えばWSJによると2014年から旭硝子の社外取締役を務めている江川雅子東大教授は、今度の株主総会終了後東京海上ホールディングスと三井不動産の社外取締役に就任する予定だ。

また富士通は女性宇宙飛行士の向千秋さんを社外取締役に迎える予定だし、グルメ杵屋は元CNBCキャスター江連裕子さんを社外取締役に迎えると発表している。

日本の上場企業の女性取締役の比率は3%未満で、女性取締役が16%を占める米国(S&P500)に較べると相当女性の役員進出は遅れている。企業統治の観点から女性役員数の拡大が求められているから、上記のような著名な女性には相当フォローの風が吹いているのだ。

しかしこのフォローの風は今まで取締役になることを目指して、「お家大事に言いたいことも言わずに我慢してきた」企業幹部には限られた取締役のシートが減る分アゲインストの風であることは間違いない。

企業の階段を地道に確実に歩き取締役を目指すという「登山型」キャリアパス以外に、他企業や大学あるいはタレント、官僚などでキャリアを積んで横滑り的に取締役になるという「スキー型」パスができたことは、果たして若い人達の職業観を変えるようなインパクトがあるのだろうか?

それは本当に社外取締役が機能するのかどうかを見ないと分らないかもしれない。

 

コメント (1)
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