昨日(11月16日)に観光局が発表したデータによると、今年1月~10月の訪日外国人旅行客が2,011万3千人と初めて2千万人を突破した。
外国人観光客の増加はアベノミクスが具体的成果を上げている分野の一つで、政府は今春に2020年には外国人観光客を4千万人に、2030年には6千万人に引き上げたいとしている。
外国人観光客の増加率からみて、政府の強気の目標を後押ししたいところだが、大きなボトルネックがある。その一つがホテルの部屋数だ。
現在日本のホテルの部屋数は約80万室である。1日当たりの外国人観光客の来日数を6.6万人(ハイシーズンには月200万人訪日するので30日で除して6.6万人)、1観光客あたりの滞在日数を5日(アジアからの訪日客を前提)として考えてみると、1ケ月に必要となるホテル室数は6.6万×5×30日=990万室となる。これに対して部屋の供給数は80万室×30日だから2,400万室である。これでホテルの41%は外国人宿泊者ということになる。
外国人観光客が倍になると、1ケ月に必要となるホテル室数は1,980万室になり、常時ホテルの82%以上を外国人観光客が占めることになる。
上記の計算は外国人観光客数と滞在日数に注目した単純計算で、まず日本人宿泊数はカウントしていない。次に地域的な観光客の偏りも季節的な偏りも考慮していない。日本人のホテル利用者を加えると現在でも、地域や季節によってはホテルの予約が困難あるいはルーム料金が高止まりという状態が続いているが、ホテルの増室なしにこれ以上外国人観光客が増えると、人気の高い地域では、ホテルの予約が困難な状況が多発することは間違いない。
対策は3つある。それは①「ホテルを増室すること」②「旧態然とした旅館を外国人旅行者に利用しやすい形態に変えて活用する」そして3番目が③「民泊の活用」である。
それぞれの対策にはボトルネックがある。ここでは②について簡単に考えてみた。
②の旅館の活用についてだが、現在の旅館の室数は70万室程度であるが、次の問題がある。まず「外国人旅行客が訪問したい地域と旅館の存在する場所が必ずしも合致していない」という問題だ。京都のような大観光地を例外とすると、頑張っている旅館は外国人がまだ訪問していない地域に多く存在すると私は考えている。この観光資源を活かすには、外国人観光客特にリピーターの眼をいかに地方に向けるか?という観光政策が重要だ。
外国人観光客のニーズは多様だから、「布団+和式風呂」という形態も十分受け入れられる余地はあると思うが、旅館の食事については疑問が残ると私は考えている。それは和食が敬遠されるということではなく、宿泊料を高くするために過度に豪華に見える食事が敬遠されるのではないか?ということだ。
一旅行者として私が旅館を利用する場合も「過度に豪華な食事」には辟易することがある。高齢者になってくるとカロリー制限などを考えるから、日本人にとっても過度に豪華な食事は不要であり、もっと簡素な食事(あるいは外食)にして、その分宿泊料金を下げて欲しいと思う。
以上のようなことを踏まえて、旅館の活用は喫緊の課題で、利用しやすい旅館の在り方について知恵を出し合う時期に来ていると思うのである。
③の民泊の利用も大きな課題だ。
Airbnb(エアービーアンドビーと読むそうだ)というアメリカ生まれの民泊斡旋会社は日本の民泊市場を潜在成長性の高い市場とみてマーケッティングに力を入れている。ただし民泊については旅館業法等との関連でグレーゾーンがある上、十分知見を持ち合わせていないので、ここではコメントを差し控える。
人口減少が進むと見込まれる中で外国人観光客の増加は明るい話題だが、宿泊施設の増強は喫緊の課題だ。本当にこれ以上観光客を増やすことができるかどうかはここにかかっている。