米国勢調査局は昨年(2016年)の家計所得(中央値)が59,039ドルで前年比3.2%上昇したと発表した(インフレ調整後)。
これは1999年の58,665ドルを抜いて史上最高の家計所得である。もっとも家計所得の集計方法に変更があったので単純な比較はできないと当局は注意を促している。
とはいうものの堅調な米国経済が家計に好影響をもたらしていることは間違いない。
所得格差についてみるとジニ指数は2015年の0.479から2016年は0.481とわずかに拡大した。
一方貧困率は2015年の13.5%から2016年は12.7%と低下した。
これについてアナリストは「金融危機後の経済復興効果がワーキングプーア層にまで及び始めたことを反映している」と述べている。
2016年の統計上貧困層は4人家族で所得が24,563ドル以下の層と定義されている。
また健康保険未加入者率は若干ながら改善し、8.8%に低下した(2015年は9.1%)。
アメリカの家計所得の動向は、今後の消費動向や政策の流れを予想する上で重要だが、我が国の状況も気になったので厚生労働省が発表している「国民生活基礎調査の概要(平成28年)」をのぞいてみた。
それによると2015年の家計所得の中央値は428万円。平均所得は545.8万円で前年比0.7%上昇。家計所得の低下傾向にやや歯止めがかかったとみることもできるが、日本の家計所得はピーク時(1994年)の664.2万円に較べるとはるかに低い水準にある。
これまた労働人口の構成割合や世帯内の家族数の変化があるので単純に歴史的な比較はできないが、日本で景気回復が実感できない理由は平均所得が増えないことにあると言えるだろう。
日本の相対的貧困率は15.6%だった。また別の厚労省データから見ると日本のジニ指数は0.5704だった。
ジニ指数と貧困率から単純に見ると日本の方がアメリカより格差社会なのではないか?という錯覚に陥る。
日本の場合低所得者層の所得税は実質無税になっているので、格差を測定するには所得再配分後のジニ指数を使う方が格差の実態を表すと言われている。所得再配分後のジニ指数は0.376なので累進課税により格差が是正されているのだ。(日米比較を行うのであれば同じ条件のジニ指数をつかうべきだが省略する)
また高齢化で年金を主たる収入源にする世帯が増えていることも日本でジニ指数が拡大している原因の一つだ。
以上のようなことから日米の家計所得の単純比較はできない。だがザックといえば所得が増える社会は良い社会である。なぜなら元気がでるからだと私は思う。