昨日最高裁は労働契約法20条問題に関する2つの重要な判決を下した。
労働契約法20条は「有期労働契約の労働条件が、無機労働契約の労働条件と相違する場合においては、業務の内容や責任の程度、配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」としている。
昨日判決がでたハマキョウレックス判決は、契約社員の運転手が正社員のみに支給されていた手当の支給を求めた裁判で、最高裁は「住宅手当」以外の手当については、原告主張を受け入れた。
一方同日判決がでた長澤運輸判決では原告側の主張は精勤手当の支払いについては認められたものの、定年再雇用者と正社員の賃金格差については高裁判決(2割程度の格差は容認される)を支持し是正を求めなかった。
ハマキョウレックスの原告側弁護士は最高裁判決を概ね評価し、長澤運輸の原告は極めて不満の残る判決だとコメントしている。
私は労働法の専門家でないので、この判決について細かい論評は避けるが、企業経営をコンサルする立場で気になった点が一つある。
それは最高裁が高裁に続いて「定年再雇用者と正社員の賃金格差が2割程度であれば容認される」という判断を示した点だ。
逆に言うとこれは格差が2割以上あれば容認されない可能性が高いということを示唆しているのではないだろうか?
現在多くの企業が採用している定年再雇用制度では正社員からの賃金格差は5割程度~7割程度のものが多いようだ。
格差は業務・勤務範囲や責任の範囲で個別に判断する必要があるが、あまり格差が大きいと企業は訴訟されるリスクが高まるだろう。
また何故ある程度の格差が容認されるかとうことについて企業の説明責任が高まるのではないか?と私は考えている。
2つの判決は同一労働同一賃金問題に結論を出したというよりは、問題の蓋を開けたと捉えるべきかもしれない。