金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

長澤運輸判決の影響

2018年06月02日 | ニュース

昨日最高裁は労働契約法20条問題に関する2つの重要な判決を下した。

労働契約法20条は「有期労働契約の労働条件が、無機労働契約の労働条件と相違する場合においては、業務の内容や責任の程度、配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」としている。

昨日判決がでたハマキョウレックス判決は、契約社員の運転手が正社員のみに支給されていた手当の支給を求めた裁判で、最高裁は「住宅手当」以外の手当については、原告主張を受け入れた。

一方同日判決がでた長澤運輸判決では原告側の主張は精勤手当の支払いについては認められたものの、定年再雇用者と正社員の賃金格差については高裁判決(2割程度の格差は容認される)を支持し是正を求めなかった。

ハマキョウレックスの原告側弁護士は最高裁判決を概ね評価し、長澤運輸の原告は極めて不満の残る判決だとコメントしている。

私は労働法の専門家でないので、この判決について細かい論評は避けるが、企業経営をコンサルする立場で気になった点が一つある。

それは最高裁が高裁に続いて「定年再雇用者と正社員の賃金格差が2割程度であれば容認される」という判断を示した点だ。

逆に言うとこれは格差が2割以上あれば容認されない可能性が高いということを示唆しているのではないだろうか?

現在多くの企業が採用している定年再雇用制度では正社員からの賃金格差は5割程度~7割程度のものが多いようだ。

格差は業務・勤務範囲や責任の範囲で個別に判断する必要があるが、あまり格差が大きいと企業は訴訟されるリスクが高まるだろう。

また何故ある程度の格差が容認されるかとうことについて企業の説明責任が高まるのではないか?と私は考えている。

2つの判決は同一労働同一賃金問題に結論を出したというよりは、問題の蓋を開けたと捉えるべきかもしれない。

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米国失業率が18年ぶりの低水準へ

2018年06月02日 | 投資

昨日発表された5月の米国の雇用統計は事前予想を上回る好調なものだった。非農業部門雇用者数は事前予想の188千人を上回る223千人。失業率は予想3.9%を下回る3.8%だった。

近時の雇用統計では失業率よりも非農業部門雇用者数の方が重視されることが多いが、WSJの記事のタイトルはUnemployment Rate falls to 18-year lowだった。5月の失業率が2000年4月以降で一番低くなったことが注目された訳だ。

これより失業率が低かったのは1969年の3.5%だそうだから、失業率は過去半世紀の最低水準に近づいているといえる。

だがもっと注目すべきことは、女性や高校をドロップアウトしたクラスの失業率が低下していることだ。

5月の女性の失業率は3.6%で1953年以降で最低水準だし、24歳以上で高校をドロップアウトした人の失業率も5.4%と過去最低水準に近いところまで低下している。

つまり求人需要がきわめて強いのだ。年率換算の時間給は4月より0.1%高い2.7%に達した。

またフルタイム従業者が904千人増え、パートタイム従業者が625千人減ったことも雇用市場の底堅さを裏付けている。

好調な雇用統計を受けて連銀の政策金利引き上げ予想が高まっている。94%のトレーダーが6月の金利引き上げを予想し、72.5%のトレーダーは9月の金利引き上げを予想している。また12月の金利引き上げを予想するトレーダーも37%いる。

ところで日本では最近雇用関係で幾つか大きな動きがあった。一つは5月31日に働き方改革法案が衆院を通過したことだ。同法案で時間外労働の上限を年720時間、月100時間に定めている。

2016年の政府の調査によると1/4近い会社が月80時間以上の残業を求めているということだが、働き方改革法案が可決されると世界一多いと言われる日本の残業時間も少しは減る可能性がある。

だが法案はボトムラインを示すに過ぎない。本筋は長時間働くと労働生産性が落ちるという当たり前のことを会社と従業員がしっかり認識することだろう。休みを多くとってリフレッシュし、創造力を高めるような働き方を考えない限り、G7の中で最低の生産性は改善しないのである。

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