昨日(2月15日)の米国株市場は、米中貿易交渉が進展するという見方から大幅に上昇した。ダウは339.98ポイント(1.33%)上昇。ナスダックも45.46ポイント(0.61%)上昇。
ダウとナスダックは8週間連続の株高となり、ナスダックは弱気相場(ピーク時から20%下落)を脱却した。
米中貿易交渉については3月1日のデッドラインまでに交渉がまとまらない場合は、関税を大幅に引き上げることになっていたが、トランプ大統領は方向感が見えている場合は関税引上時期を2ヶ月延長することもあると示唆した。
株価の上昇が続いているのは、米中貿易交渉が決着した場合、センチメントが大きく改善され、更に株価が上昇することを期待して投資家が先買いしていることによる。
投資家が強気になっている時は、悪い景気指標も軽視される。昨日発表された1月の鉱工業生産は、市場予想の+0.1%を大きく下回るー0.6%だったが、それほど悪材料とは思われなかった。
一つは12月からの米国政府機関の一部閉鎖で統計データの信頼性について懐疑的な見方があったことによる。
だが世界最大の農機具メーカー・ディア社の決算発表を見ると、米中貿易交渉の進展に懐疑的だった米国の農家がトラクターなど大型車両を買い控えていたことが伺える。
またトランプ大統領が国家非常事態を宣言して、メキシコとの国境の壁建設のために80億ドルの資金をプールすると述べた。
壁建設に議会が承認した予算は14億ドルなので、その差額を軍事施設建設費などから回す計画である。
ただしこれもそれほど相場の悪材料にはならなかった。「トランプ大統領はメキシコ国境に壁を作ることを選挙公約としていたのでしょうがないんじゃないか」といった気分が事前に広がっていたのではないだろうか?
投資家という人種もつまるところ、事実を冷静に見ているというよりはその時々の自分の相場観に合う材料を見る人種なのかもしれない。
貿易交渉の相手国中国では、1月の消費者物価指数と卸売物価指数が発表された。それぞれ前年同月比1.7%と0.1%の上昇で市場予想よりも低かった。インフレの鈍化は大きな債務を抱える中国企業にとっては元利払い上の脅威だ。
私は中国の方が貿易交渉妥結についてより強く望んでいると見ているが、交渉は相手がある話。
来週も相場の最大のトピックは米中貿易交渉だろう。