昨日(2月27日)米国株はナスダックは若干上昇したものの、ダウ・S&P500は少し値を下げた。
原因の一つは米中貿易交渉の行方へ対し投資家が少し懸念を持ったことにあるようだ。
昨日米国のライトハイザー通商部代表は、3月最初に予定されていた関税の引き上げ(10%→25%)については、貿易問題を解決する暫定的なメカニズムに両国が合意したので見送るというコメントを発表した。WSJはU.S. drops threat of 25% tariffs on Chinese goods in sing that accord is nearというタイトルで報じていた。
Accord(協定)が近いということだれば、マーケットはもっとポジティブに反応してもよいようにも思えるが、そうはならない。
その理由を私は次のように考えている。一つは「関税引き上げ見送りは既に前からその可能性が報じられていたので織り込み済みであること」だ。そしてもう一つは「暫定的なメカニズムの実効性について懸念があることだ」だろう。米国の主張は米中の貿易協定(知的財産権保護や技術移転問題等)に中国側の違反があれば各レベルで協議を行うというものだが、中国側はこれは中国を犯人扱いし、米国は裁判官の立場に立つものだと反発している。
一方とにかく貿易問題に決着をつけて選挙前に点数を稼ごうとしているトランプ大統領と実務交渉を担当するライトハイザー代表のギャップも気になるところ。
再選を目指すトランプ大統領としては、北朝鮮問題・中国問題で点数を稼ぐ必要があるが、焦りすぎると実のない交渉となる。
このあたりは選挙による民主主義の一つの弱点が露呈しているようだ。
民主主義の弱点が露呈している顕著な例は、Brexit問題だ。
また今秋は印パ紛争で緊張が高まっている。カシミールでのテロリストによる自爆テロの裏にパキスタンがいるということで、インドが越境爆撃を敢行し、パキスタンが2機のインド空軍戦闘機を撃墜したという。
これの緊張感の高まりの背景にも統一選挙を控えたインド政府の点数稼ぎがあるという見方があるようだ。
ニーチェは「狂気は個人においては稀なことだが集団や党派においては通例である」と述べている。俗な言葉でいえば、赤信号みんなで渡れば怖くないである。
西部邁は「デモクラシーを民主主義と訳するのではなく民衆政治と訳したならば、欠陥や誤謬が存在することが理解しやすかった」という趣旨のことを述べている。
外交問題においてどちらか一方が圧倒的な勝利を収めることはない(仮にあったとすると長続きはしない)という当たり前の原理に民衆が腹落ちするかどうか?ということが米中貿易交渉の行方に横たわっている気もする。独裁政治は暴走するが民主政治は暴走しないというのは理念ではあるが、現実は時々裏切ることがある。