WSJにBiden Administration to provide Ukraine with more Intelligence,heavier weapons to fight Russiaという記事が出ていた。
バイデン政権はウクライナがロシアと戦うために一層のインテリジェンスと重火器を供与することを決めたという意味だ。
私がこの記事を読んで一番注目したのは「インテリジェンスの提供が重火器の提供よりも先に書かれている」という点だった。
インテリジェンスは日本語に訳するよりも原語のまま理解した方が良いがあえて訳せば敵国の機密情報や諜報活動を含む広い情報活動だ。
記事は近時ロシアが戦略をウクライナの首都キーフ攻略から東部ドンバス地方での大部隊による攻撃に転換したことに対応するもので、供与する重火器の中には155mm榴弾砲などが含まれている。
これらの武器をウクライナ兵が操作するには訓練が必要だが、ペンタゴンによるとトレーニングは既に東欧に派遣されている米軍が担当するということだ。
インテリジェンス=ロシア軍の動きに関する機微情報について米国はより濃い情報をウクライナに提供する予定だ。これによってウクライナは同国を占領しているロシア軍に対して、大砲やドローンでの攻撃が可能になる訳だ。
なお米国はロシア領内に関する情報はウクライナに提供しないと述べている。もしロシア領内におけるロシア軍の位置等をウクライナに伝えるとウクライナからロシア攻撃が可能になるからだ。
このことは幾つかのことを示唆している。
一つは今回の戦争におけるインテリジェンスの重要性。 インテリジェンスはいつの場合でもつねに重要だが、ロシアのキーフ攻略は明らかにインテリジョンス不足だった。孫子は「敵を知り己を知れば百戦するも危うからず」と喝破し「敵を知らず己を知らざれば戦うごとに負ける」と続けている。
キーフを攻略したロシアはまさに「敵も己も知らないから負けた」のである。
これに対しアメリカは言外に「その気になればロシア領内のロシア軍の動きや編成などの情報をウクライナに提供できる」と脅かしていると思われる。
これまでアメリカは重火器の供与などでロシアから交戦国呼ばわりされることを避けてきた。しかし先日バイデン大統領がロシアをGenocide(国民などの大量虐殺)を行っていると非難したことでウクライナ支援をギヤアップしたと思われる。
これに対するロシア側の反応は分からない。ただしもしドンバスで大きな戦争が行われるとすれば、それはかなり激しいものになることは間違いない。
もっとも孫子の教えに従えば、戦う前に己と敵の兵力、士気、道義などを比較すれば勝敗はおのずと明らかになり賢い将軍は無用の戦いと避けるということになるのだが、現実には「やってみなければ分からない」という意見が多数を占めるのだろう。