先日かかりつけの女医さんの定期健診を受けた時、彼女は「私が食事に注意してとか、運動をしてくださいね。というのは、ピンピンコロリをして欲しいからですよ」といった。
ピンピンコロリとは、「寿命」と「健康寿命」がともに長く、かつ両寿命の差がないか、あっても短い状態だ。
これはおそらく大部分のシニアが望むところで、洋の東西を問わない。いやこの分野の研究は、アメリカの方が進んでいるだろう。例えば「老年学」という言葉は、数年前から日本でも使われだしているが、これは英語のGerontologyを訳したものだ。もっとも日本では老年学という言葉は、高齢者に金融商品を売り込む金融業者により使われることが多い。Gerontologyと語源を同じくすると思われる言葉にGeriatricianという言葉がある。これは「老人病専門医」という意味だが、この言葉は日本ではあまり普及していないだろう。
ちなみに私の住んでいる市で、老人病専門医を検索してみたところ、ヒットしたのは、「老年内科」を掲げている医院一つだった。もっともこの医院は「内科」「小児科」などと並んで「老年内科」を掲げているので、老人病の専門家であるかどうかは分からない。
さてWSJにThe Science of why your body takes longer to
bounce back after 40という記事がでてきた。
「40歳を過ぎると体の回復に時間がかかる理由の科学」という意味だ。
記事は健康上のストレスから立ち直る能力つまり「生物学的回復力」は、年齢とともに低下することが証拠により示されていると述べる。
ある研究によると、30歳以降筋肉量は10年ごとに3%から8%減少し、60歳以降は急速に減少し、脂肪量が増える。このため可動性が低下し、転倒や怪我のリスクが高まる。また水分を多く蓄えることができる筋肉量が減少することで、歳を取ると脱水症状を起こしやすくなる。記事には詳しい説明はなかったが、アルコールを処理する酵素が変化するので、歳をとると飲酒からの回復力も低下するということだ。
さてピンピンコロリを実践するには「生物的回復力」の低下をできるだけ遅らせるということになるのだろうと私は思う。
どうすれば「生物的回復力」の低下を抑えることができるか?ということについてよく言われていることは、睡眠、バランスのとれた食事、適度な運動だ。
運動については、記事の中に「ホルミシス」Hormesisという考え方が述べられていた。これは高用量のストレスは体に有害だが、低用量のストレスは体に有益な場合があるという考え方だ。インターネットでホルミシスを検索すると、「微量の放射線を当てることで生体を活発化させることがある」ラドン温泉の例などがでてくる。
WSJにはラドン温泉の話はでてこないが、運動などの低用量のストレスを与えることで健康を促進する効果が高まると述べられている。
一方一般に筋肉量の減少を防ぐには、かなり強い刺激を筋肉に与える必要があり、単に歩く程度では刺激力が少ないという意見を聞いたことがある。
シニア世代にとって運動が必要なことは間違いないが、どの程度の運動が望ましいか?ということになると、個人差もあり難しい問題だと思う。
このような課題に応えてくれる「老人病専門医」がいると訪ねてみたいものだが、日本では可能性が低い。
なぜなら日本では「お医者さんは薬を処方してこそ診療報酬を貰える」という仕組みで、生活指導などのアドバイスでは大した報酬を得ることができないからだ。
だがもし日本が国をあげてピンピンコロリを目指すのであれば、安易に薬を処方しない老人病専門医が必要なのではないだろうか?
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