今週の外交面で話題になったのは、フィリッピンのドゥテルテ大統領が、米国のオバマ大統領に侮辱発言をしたため、両大統領の会談が中止になった話だ。色々なメディアは伏字で表現しているが、son of bitchと言った。このような相手を罵る言葉を使うことを英米の紳士は恥と考えているし、そのような言葉を使う人を紳士として扱わないのである。
ドゥテルテ大統領は首脳会談でオバマ大統領が麻薬関連事件で2千名以上の人名が奪われたことに人道的観点から疑問を呈する予定だったが、それに対してフィリピン大統領は内政干渉だと激高したようだ。
もっともドゥトルテ大統領はその後謝罪のコメントを発表している。
これはフィリピンとアメリカの投資・貿易・軍事面などの深いつながりを考えると当然のことである。
アメリカのフィリピンに対する直接投資額は731億ドルで1番だ(2番は日本)。またフィリピンからの輸出先としては日本についてアメリカは2番目(3番目は中国)だ。
緊密な関係にありながら、親密国の大統領に対して侮辱発言をする背景は何なのだろうか?
それは世界中で強権主義を掲げる政治家の人気が高まっている傾向そのものである。代表的な強権政治家としてはタイのブラユット首相、ロシアのプーチン大統領そして米国の大統領候補の一人ドナルド・トランプが目に付く。
これらの強権政治家に共通する手法は「簡単に解決することができない問題に対して実現可能性は不明な極めて短絡的な政策を示し、大衆の人気をとる」ことにある。
フィリピンの場合、超法規的な大量殺戮が制御不能になっているという見方もあるが、9割以上のフィリピン人がドゥトルテ大統領を信頼できると評価しているそうだ。
強権政治家が台頭する背景には所得等の格差拡大があるといわれているが、実際のところはロシアなど強権政治家が指導する国の方がGINI指数でみると格差は大きい。ロシアのGINI指数は40、中国は47、米国は35、日本は31である(調査時点が異なるので正確な比較ではないが)
これだけのデータから「強権政治は格差是正にプラスに働かない」と結論つけるのは乱暴だが、もし米国民が格差是正を目指してトランプを選ぶとすればそれは賢明な選択ではないだろうと推論することはできる。
国民の一時的な感情に訴える政治手法は長続きしない。骨は折れるが問題を地道に理論的に解決する道を模索するしかないのである。
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