「噂で買って事実で売る」という格言がある。9月の連邦公開市場委員会で3回目の金融緩和策QE3が打ち出されるのではないか?という期待感は、先月の雇用統計が発表された時から急速に高まっていた。従ってもし昨日の連銀のアナウンスが市場予想程度であれば、相場はそれ程上昇しなかったかもしれない。
実際のところは米国株式相場は、ダウが206ポイント(1.55%)上昇、S&P500は23.43ポイント(1.63%)上昇した。私はこれは連銀のQE3に関するコミットメントが市場の期待以上に強かったからではないかと考えている。
特に強いと感じたのは、連銀が労働市場が顕著に改善するまで、open ended(期限を定めず)で、毎月400億ドルのペースで住宅ローン担保債券を購入する予定だ、と明言したことだ。open endedというところに強いコミットメントを感じる。
また連銀はゼロ金利期間を半年延ばし「少なくとも2015年半ば頃まで政策金利をゼロ近くに据え置くだろう」と述べた。米国の低金利が持続するとドル・円で見ると円高要因だ。新聞によると7ヶ月ぶりの円高だ。
ところで連銀が住宅ローン担保債券を購入するということは、どういうことかというと一種の錬金術。つまり連銀は住宅ローン担保債券を保有する銀行から債券を購入し、購入代金をその銀行が連銀に持っている口座に入金する。キャッシュが潤沢になった銀行は、法人融資や個人融資に積極的になるだろう、というのが連銀の狙いだ。また住宅ローン担保債券が買われることで、債券利回りは低下(価格は上昇)する。その結果住宅ローンの金利が下がり、住宅購入者が増えるというのも連銀の狙いだ。連銀はこれらのことを通じて、景気拡大を雇用拡大につなげようとしている。
では金融緩和策はどれほど雇用市場にプラスの影響を与えるのか?ロイターは、量的緩和策が雇用等実体経済に与える影響は金利に与える影響に較べるとはっきりしないと述べながらも、サンフランシスコ連銀のジョン・ウイリアムス氏が発表したモデルを紹介している。それによると、昨年のQE2で連銀は6千億ドルの債券購入を行ったがそれにより70万人の雇用が創出されたということだ。
だがQE3は両刃の剣だ。共和党はQE3に反対し、ロムニー大統領候補はバーナンキ議長を再選しないと述べている。連銀は政治的には中立という立場だが、バーナンキ議長も人の子であれば、再選しないといっている大統領候補には当選してほしくないはずだ。大統領選挙に向けて住宅ローン金利の低下や労働市場の改善に向けて打てる手を打つ、と私は考えている。
これはリーマン・ショックのはるか前の話なので、参考になるかどうかしらないが、米国民にとって良い政治とは住宅ローンの金利を低下させる政治なので、大統領選挙の前は長期金利は低下するという話を聞いたことがある。
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