先日暇つぶしに本を読もうと思い、ブックオフの100円コーナー(税込み110円)に立ち寄り、買ったのが江上剛さんの「56歳でフルマラソン、62歳で100キロマラソン」だった。
第一勧銀(現みずほ銀行)の支店長を経て、上層部との意見対立から退社して作家になった江上さんの小説は数冊読んだことがあるがエッセーは初めて。
年齢が比較的近くかつ同じ時期に銀行の合併問題で苦労した江上さんには多少親近感を持っていたが彼がマラソンランナーだったことはつゆ知らなかった。
もっとも江上さんがマラソンを始めたのは57歳ごろの話だ。完全メタボだった江上さんは近所のマラソン好きの人たちに支えられマラソン開始後半年でフルマラソンを完走する。そして62歳の時にはついに100㎞マラソンを完走した。
私のランニングはジョギング程度でフルマラソンを走ろうなどと考えたこともないが、江上さんの話は登山委愛好者また一人のシニアとして共感するところが多かった。以下幾つかか心にとまった文章を引用しよう。
- マラソンは、完走するという目標を持つことができる。人は目標に向かって努力している時が最も充実する。
- 私のように、もうじき六十歳になろうというオジサンも、若者も、みんながマラソンにはまってしまうには、マラソンにはベタな応援歌が仕込まれているからだ。自分の人生のゴールなんて、どこにあるかもわからない。サラリーマンになればとりあえず生涯安泰、なんて時代は終わった。自分の人生に欠けていたもの、それは自分自身を応援する、ベタなまでの応援歌だ。
- 走るという極めてシンプルな運動を通じて、自分を見つめたい、自分を確認したい、自分はもっとやれるという自信を得たい・そのために走っているように思える。
- 友人のランナーが言った。「マラソンは、唯一、過去の自分だけがライバルだ」これは名セリフだ。
「マラソン」を「山登り」に、「完走」を「完登」に、「走る」を「登る」に置き換えるとそのまま登山に関する箴言になるだろう。唯一最後の「マラソンは、過去の自分だけがライバル」というところは気になるが・・・
登山は非情なスポーツで若い時にできたアクロバティックな登攀は歳を取るとできないからだ。
しかし私が江上さんの本から得たものはマラソンと登山の類似性からくる登山への賛辞だけではなかった。
実は今「家族のもめごとを防ぐコンフリクト・マネジメント」(仮題)というメルマガの原稿を書いているところだが、決め台詞探しに頭をひねっていたところに大きなヒントが見つかったのだ。
家族を含めて人間関係を良くする最大の方法は「好意の返報性」という法則を活かすことだ。これは「人は自分に好意を寄せる人に好意を持つ」という心理的な法則だ(もっとも若い女性に好意を寄せてもキモイと思われることもあるが)。ところで相手を好きになる秘訣は相手の長所や魅力を見つけることだ。ところで自分に自信がある人や自己肯定できる人ほど他人の長所に目を向けやすいという傾向がある。
この関係を整理すると「何かを通じて自信をつけると他人の長所に目を向けるゆとりが生まれ」「他人の長所を見ることができるとその人に好意を持つ」「相手に好意を持つと相手からも好意を持たれることが多くなり人間関係が良好になる」というものだ。
自分に自信を持つ方法がマラソンや登山なのだ。
ということでコロナウイルス禍が下火になれば是非もっと山に行きたいものだという我田引水な話にまとまってしまった。(笑)
そうそうご存じだと思い説明を省略しましたが、セレンディピティは偶然想定外の役に立つ何かを発見するという意味で使っています。
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