17日付のエコノミスト誌に「将軍と天皇」という記事が出ていた。記事は「米国が1850年代に日本に初めて交易を求めた時、誰が日本を治めているか悩んだが、今に中国がその疑問を感じることはない。答は影の将軍・小沢一郎だからだ」と書き出す。
12月10日に143名の民主党国会議員を含む総勢645名の大訪中団~エコノミスト誌の言葉を借りると中世の朝貢団の現代版~は、5機の飛行機で北京を訪問した。小沢幹事長と胡錦濤主席の会談は中国の夜のテレビのトップニュースになった~未だに日本人嫌いの多い中国で日本の話がトップニュースになることは少ないようだ~。
だが小沢氏が日本の国粋主義者を激怒させたのは、卑屈なまでに中国に腰をかがめた訪問団の問題ではない。小沢氏が間接的に、天皇陛下が国賓に謁見する場合は30日の事前手配をするという儀礼慣習を無視して宮内庁に謁見を指示したことである。さらに小沢氏が天皇陛下と中国の習近平国家副主席との特例会見を「天皇陛下の政治利用」にあたると懸念を表明した羽毛田信吾宮内庁長官を激しく批判したことにある。
小沢氏は羽毛田長官について「どうしても反対なら辞表を提出してから言うべきだ」と記者会見で述べた。また国会内で関係者に「あいつ(羽毛田長官)こそどうかしている。天皇の権威を笠に着ている」と批判した聞く。
小沢氏のこの発言は幾ら闇将軍として力はあろうとも、権限を逸脱している。彼に宮内庁長官を罷免する権限はない。また天皇陛下の信頼を得ている宮内庁長官に対する雑言は陛下への非礼と批判されてもいたしかたあるまい。
だがこのことは多くのマスコミが既に取り上げていることでこれ以上コメントを書くつもりはない。
むしろ私が知りたいことは645名の大訪中団は中国で何を見たのだろうか?という点だ。訪中団の経費が党費か私費かあるいはその一部が内閣官房報償費(機密費)から出ているのかは知らない。しかしいずれにせよそのかなりの部分は直接・間接の国民の税金であることは確かだろう。
中国を訪問するのであれば、航空母艦の建造を含め、戦力増強著しい中国海軍を見せてもらうべきだったと私は思っている。
私は中国を重視し友好関係を深めることに反対するものではない。しかし身近なところを思い起こせば、フィリピンの要求で1995年に米比相互防衛条約が破棄され、米軍がフィリピンから撤退した後、フィリピンが主権を主張する島を中国が占領した「南沙諸島問題」が起きた。普天間基地問題で日米間がきしむ間に中国との親密関係を深め、米国との交渉のleverageにしようとするのは高等外交術かもしれないが危険はないだろうか?
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今私はジム・コリンズのHow the mighty fall(邦訳はないが、「どのようにして大企業は墜落するか?」という意味)を半ば位まで読んでいるところだが、大企業の失敗は成功への慢心から始まることを改めて認識した。政党の失敗も恐らく大部分は慢心から始まるのであろう。
もっとも小沢氏の一連の行動が政治的深謀によるのか単なる慢心の結果なのか真実は分からない。だが一連の動きに慢心の気配を感じるのは私だけだろうか?
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