昨日(6月6日)発表された米国の雇用統計は、ほぼ市場予想どおりだった。5月の非農業部門雇用者増は217千人。これで4か月連続で20万人以上の雇用者増が続いた。これは2000年1月以降初めてのことだ。失業率は6.3%で変わらず。市場予想は記憶では6.4%だったと思うのでこちらも好感された。
これを受けて米国株は続伸し、ダウ・S&P500は新高値を更新した。S&P500のセクター別では下落したのはディフェンシブ銘柄のヘルスケアだけだった。さらなる株価上昇を期待して、投資家はデフェンシブ銘柄を売り、ベータ値の高い銘柄にギヤをシフトしたのだろう。
恐怖指数と呼ばれることもある株価のボラティリティ指数は10.73と2007年2月以降で最低レベルに下落している。
株価が堅調になってくると、春先に横行したコレクションが起こるだろうという説は影をひそめ、何故株式市場は堅調なのか?といったコメントが増えてくる。USA Todayに5 reasons why the stock market is shining brightという記事がでていた。これから日本株のラリーが続くかどうかを判断する上でも参考になるところがあると思う。
1.モメンタム株の売りが優良銘柄の売りにまで広がらなかった
昨年後半から値を飛ばしてきたバイオやインターネット関連(モメンタム株)は今年に入って大きく値を下げた。しかしモメンタム株の売りはブルーチップ(優良銘柄)の売りには広がらなかったので、株式市場全体がコレクション(10%以上の下落)を起こすことはなかった。「話題株」の温床であるナスダックは、今年に入って一時昨年のピークから8%以上下落した(現在は1%の下落まで回復)が、S&P500の下落は4%にとどまり、現在は高値を更新中である。
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日本株について考えてみると6月に入って急速に値を戻しているものの春先の下落幅は大きかった。米国株の下落にレバレッジをかけて下落している感さえあった。これは投機筋の売りにBuy in dip(底値買い)で買い向かう腰の入った長期投資家が少なかったことの表れだろう。優良銘柄、たとえばJPX日経400銘柄をコンスタントに買うような機関投資家の資金がコンスタントに流れ込むようになると日本株ももっと安定するのだが・・・・
2.寒波による経済萎縮は解消
第1四半期のGDP成長率はマイナス1%だったが、第2四半期は3%前後の経済成長が期待される。
3.中央銀行の金融緩和策
春先には世界経済の足取りが弱いのも関わらず、主要中央銀行が金融緩和方針を変更するのではないかという懸念を抱く投資家がいた。しかし米連銀は時期尚早な政策金利金利引上げは行わないことを明確にした。またECBも政策金利の引き下げを実施し、必要があれば米国スタイルの債券購入に乗り出すことを検討するとして、その役割を果たした。
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消費税引き上げのマイナス影響が当面限定的、ということで日銀の早期の追加緩和策実施は遠のいていると思われる。もしこのまま株価が堅調に推移し、資産効果が消費効果に及び始めると追加緩和はないかもしれない。これは私は歓迎するべきことだと思っている。一消費者としては辛い話だが、まだまだ消費税を引き上げないと日本の財政はやがて立ち行かなくなる。その時に備えて日銀は弾を残しておくべきである。
4.ウクライナ危機は制御不能にまで拡大しない
5.弱気筋が見方を変えた
記事によるとコレクションリスクを警鐘していたヘッジファンドAppaloosa ManagementのTepper氏が「市場の主な懸念要因は緩和された」とトーンダウンした。
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しかし米連銀の幹部の中には、株価のボラティリティが下がり過ぎていることに懸念を示す人もいた。市場参加者のリスクに対する警戒心が交代し過ぎると、相場が過熱し大きなコレクションにつながる可能性があるからだ。
市場が注目していた米国の雇用統計は、米国経済が緩やかながらも着実な回復を続けていることを裏付けるものとなった。だがその回復はまだ主要中央銀行の緩和政策に支えられたものである。株式投資に過大な期待を抱かず、着実に成長を続けるブルーチップを選択する時期なのだろう。
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