米国大統領選挙の当日はカトマンズ(ネパール)のホテルから空港に移動した日だった。ホテルに迎えに来てくれた現地旅行会社の社長夫妻はトランプが大統領になると、移民受け入れを制限する可能性が高いので、ネパールにとってもマイナスではないか?というコメントを残していた。私もトランプ大統領下の不透明さを考えながらネパールを後にした。
私は旅行前は大方のマスコミの予想と同じく、ヒラリー・クリントンが8割程度勝つのではないか?と予想していたが、米国株のポジションはアマゾンを一部売却し、少し軽くして旅に出た。選挙結果はご承知のようにトランプ氏の勝利。米国大手マスコミの予想はことごとく外れた。
予想が外れたというと、何をするか分からないトランプ氏が大統領になると、株式は売られるという予測も外れた。トランプ氏が主張すると法人税の引き下げが実施されると企業業績にプラスということで株が買われたからだ。ただしハイテク銘柄に関しては売られた。これはハイテク企業は海外で稼いだ金を米国に持ち帰らず、そのまま海外に置いておく傾向があるが、トランプ氏は海外での所得そのものに課税しよう主張しているので、ハイテク企業の税負担が増えると投資家が判断したことによるのだろう。またアマゾンについては選挙中にトランプ氏が「反トラスト法の問題を抱えている」と非難したことも重荷になっている。
トランプ当選は予想できなかったが、アマゾン株のexposureを減らしていたことは、偶然とはいえプラスに働いた。
今回の米国選挙結果の予想からわかることは、先のことは分からない、専門家の意見などというものもあてにならないという当たり前の原則が明らかになったということだけだった。
以下WSJに掲載されていたトランプ政権下の経済成長予測を紹介するが、上記のような生々しい経験を踏まえると、相当割り引いて考えておく必要はあるだろう。トランプ政権下で何が飛び出すか分からないから、暫くは固定観念を捨てて、その場その場で判断していくというのが正しい方法だと私は考えている。
さてWSJが集計した576名の経済学者の予想では、米国の経済成長率は過去1年間の1.5%から大きく上昇して2017年には2.2%、18年には2.3%になる。インフレ率は17年が2.2%で18年が2.4%と予想されている。
これはトランプ新大統領と与党共和党が法人税率の引き下げと規制緩和やインフラ投資を実施しながらも、当面財政支出を抑制しないということを前提にしているようだ。
一方トランプ政権のリスクは保護貿易政策が世界的な関税引き上げ競争を引き起こし、世界経済が低迷することにある。ただしこのことのリスクの程度はもう少し彼の貿易政策が見えてこないと評価が難しいだろう。
ところでダウは昨日の終値が18,923ポイントと19,000の大台まであとあと一歩と迫った。このままあっさり大台を超えるかどうかは分からないが、仮に大台を超えると過去の例(千ポイントという大台越えの後は平均的にその後の3か月で4%近く株価が上昇している)から見ると、しばらく株価上昇が続く可能性が高い。
これは新政権の政策云々というよりも、市場の勢いというものだろう。