金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米耐久消費財予想以上に堅調でドル一段高に

2016年11月24日 | 金融

昨日(11月23日)米国商務省が発表した10月の耐久消費財受注は、予想(+1.5%)を上回る4.8%増となった。もっとも4.8%増加したのは、「全」耐久消費財受注額で、変動幅の大きい民間航空機の受注が大きく伸びたことが大きい。

より投資家が注目するコア資本財(航空機を除く非国防資本財)については、前月比0.4%の増加だった。ブルンバーグ日本語版のニュースのタイトルは「コア資本財は0.4%増、前月は1.4%減に下方修正」となっているが、ReutersのタイトルはUS durable goods orders up 4.8% in Oct vs 1.5% increase expectedとなっていて増加幅の大きかった全耐久消費財を見出しにしている。

景気が良くなってくると更に景気が良さそうな数字に目が行くという例かもしれない。

いずれにせよ堅調な耐久消費財受注は、住宅統計などとともに米国の景気が極めて堅調に推移していることを裏打ちした。

耐久消費財については、新大統領のトランプ氏がインフラ投資の強化を宣言しているから今後も伸びが予想される。

好調な経済統計を受けて、ドル指数は10年ぶりの高水準に達した。金融先物市場では来月13-14日に開かれるFOMCでの政策金利引き上げはほぼ確実視されており、関心事は早くも来年6月の利上げ動向に向かっている。

さて今月の米国大統領選挙以降急速なドル高や米国株高が起きているが、トランプの勝利とどれ程関係があるのか?あるいはクリントンが勝っていたらこのようなラリーは起こらなかったか?などと考えてみるのも頭の体操としては面白いだろう。

例えば10月の耐久消費財受注はトランプの勝利とは関係ないものだ。つまり米国経済は確実に良くなっており、12月の政策金利引き上げはほぼ確実だったということになる。

ただ法人税の大幅引き下げなど企業に優しい政策を掲げるトランプの勝利により、経済成長が加速する見通しが高まっていることは事実だ。

アトランタ連銀は第4四半期の経済成長率見通しを3.6%に引き上げた(6-9月の実績は2.9%)。これらのことから更なる利上げが視野に入りドル高を加速している。

もっともトランプ新大統領の政策はまだ全貌が見えないので、まったくの期待の買いであることは間違いない。

お釈迦様に「毒矢のたとえ」という話がある。ある修行者がお釈迦様に「この世は永遠に続くものなのか?有限なものなのか?」ということを尋ねた。お釈迦様はその問には直接答えず「毒矢が刺さった時、お前はその毒矢が誰が放ったものか?などと聞くだろうか。大事なことはそのようなことではない。まず毒矢を抜くことなのだ」と諭されたという話だ。

今はトランプの政策が何なのか?という答えの見つからないことを考えるより、ドル高株高というモメンタムに乗る方が良さそうである。

ただしこれが一種の幻想という面を持っているということを忘れてはいけないが。

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2人の子か4人の姪のためなら・・・

2016年11月22日 | うんちく・小ネタ

3人いる姪(弟の子ども)の1人が結婚するという話を最近聞いた。

この姪は動物好きでその道の専門学校を出た後、動物園と水族館の複合した施設で動物の飼育や展示?に係わる仕事をしている。

私の両親から見るとこの姪を含めて5人の孫がいるが、孫の中で初めて結婚するのがこの姪である。高齢の両親にとっても遺伝子がつながっていく可能性ができたことは大変うれしいことだろうと私は思っている。

この動物好きの姪とこの前リチャード・ドーキンスの利己的な遺伝子の話をしていたら、「そんな話を聞いたことがあり、興味があるので読んでみたい」ということになった。ドーキンスの利己的な遺伝子は私の本棚の中にあるからプレゼントしようと思っていたが、ちょっと探したところ見当たらない。

そこで簡単に見つかった竹内久美子著の「そんなバカな!」~遺伝子と神について~をプレゼントすることにした。この本は簡単にドーキンスの利己的遺伝子論を解説しているので、動物好きの彼女には参考になるはずだ。

本を贈る前に再度チラッと読み返してみた。最初にでてくる話はJ.B.S.ホールデンの「二人の兄弟か八人のイトコ」という話だ。

これは血縁度から見ると二人の兄弟、あるいは八人のイトコをそろえると自分一個体分の遺伝子が揃う可能性を示してるという話である。

生物には遺伝子を残したいという本能がある。遺伝子には親⇒子⇒孫・・・という直系でつながると考える場合がほとんどで兄弟やイトコというバイパスを忘れがちだが、少し考えてみると我々は兄弟やイトコと意外な大きさで遺伝子を共有していることが分かる。

ちなみに片方の親と子は遺伝子を1/2共有する。兄弟もまた遺伝子を1/2共有する。遺伝子の共有割合を血縁度というから兄弟の血縁度は1/2だ。

イトコの血縁度は1/8なので、イトコ8人と兄弟2人の血縁度の合計は等しいことになる。

甥や姪の血縁度は1/4なので、2人の子どもと4人の甥・姪の血縁度の合計は等しいことになる。

これは確率的な話で甥や姪の中には特定分野における遺伝子を多く共有しているものがいるかもしれない(生物学的に正しいかどうかは知らないが)。

私は中学生や高校生の頃生物学が大好きで一時その方面に進もうか?と考えたこともあるので、今度結婚する姪の中にある親近感を覚えることがある。

そのことは別としても私が姪の結婚をうれしいと思うのは、1/4の遺伝子を共有しているからである。

★    ★    ★

話は飛ぶが遺産相続争いは時として兄弟姉妹の中に修復し難い対立・憎しみを生む場合があるという。

少し立ち止まって兄弟とは1/2の遺伝子を共有していることに思いをめぐらしてはどうだろうか?

仮に自分が少し譲ってそれで兄弟やその子(甥や姪)たちがその分幸せになり、繁栄するとすれば自分が持っている遺伝子と同じ遺伝子が繁栄することになるとホールデンは教えているのだが・・・・

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参照基準点を変えると人生が変わる

2016年11月21日 | ライフプランニングファイル

先日一般社団法人 日本相続学会の研究大会で行動経済学者の川西諭教授の「高過ぎる参照基準点が相続争いの一つの原因だ」という話を聞いた。この話を敷衍して少し考えてみた。

行動経済学は人間の効用判断は絶対額ではなく、その額を判断するある基準によって変わるということを明らかにした。

ボーナスが10万円増えた場合でも増えて当然の考えている人と増えることを期待していなかった人では喜びが違う。

バーゲンセールでは¥10,000→¥6,800といった値札を目にすることがある。消費者はその商品の価値が¥6,800に値するかどうかを考える前に10,000円が6,800円に値引きされたので安いと判断してしまう。これは10,000円という価格がアンカーなり、消費者はそこを判断の基準点としていることがわかる。

大きく考えると基準点は心の持ち方といってもよいだろう。

次のような格言がある。

心が変われば態度が変わる。態度が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。運命が変われば人生が変わる。

この格言の出どころは複数あるようで、ヒンドゥ教の教えだと書いている人もいた。ヒンドゥ教の経典のどこに書いてあるのかは分からないが、カルマ(結果を伴う行為)と因果応報の理論に呼応するので、ヒンドゥ教の教えの中にあるのかもしれない。

さてこの格言の中間を飛ばすと「心が変わると人生が変わる」ということになる。心が変わるということを「効用判断のベースとなる参照基準点を変える」という言葉に置き換えるとタイトルの「参照基準点を変えると人生が変わる」という言葉になる。

高過ぎる欲望は時に人を苦しめる。食欲のような物欲には通常際限がある。人が食べることのできる量には限りがあるからだ。だが金銭(特に帳面上の金銭)はいくらでも所有することができるので、欲望に歯止めがない。歯止めのない欲望がその人の参照基準点を押し上げ、結局どこまで行っても満たされることがない状態が続くのではないだろうか(経験がないのでわからないが)

結局「幸せとはなにか」ということについて正しい基準点を持たない限り、人は幸せになることはできないのだろう。そして正しい基準点を見出した時、行動が変わり、人生が変わるのである。

古来世界的な宗教は超越的に貪欲を戒めてきた。聖書は「富めるものが天国に行くことはラクダが針の穴を通るよりも難しい」として、富者に貧者への施しを求めた。イスラム教やヒンドゥ教も施しを重要な宗教行為と教える。

このような宗教的フレームワークを持たない現在の日本は自由で気楽な社会なのだが、自分で正しい参照基準点を見出す必要があるので、一方大変な社会なのかもしれない。

 

 

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基準点の高さと複数の規範が相続を争いの場にする(川西教授の話から)

2016年11月19日 | 相続

昨日(11月18日)中央大学駿河台記念館で、一般社団法人 日本相続学会の研究大会が開催された。

基調講演は行動経済学者・川西諭上智大学経済学部教授の「なぜ相続が争族になるのか?」という話。この話について感想を述べてみよう。

川西教授の話のポイントは3つあったと思う。それは「各相続人の(参照)基準点が高いので、争いになる」「現在の日本では複数の規範が存在し、各相続人が自分の規範を持ち出すので争いが収集しない」「コミュニケーション不足が相手の規範の理解を難しくしている」と私は理解した。

(参照)基準点はこの場合、要求水準あるいは達成すると満足するポイントと考えてよい。複数の規範というのは「子どもはだれでも親の財産を平等に引き継ぐ権利がある」とか「親の面倒を見た子どもはより沢山財産を相続する権利がある」なという色々な考え方があるという意味だ。

規範はフレームワーク(枠組み)と言い換えても良いと思う。フレームワークとはある社会に共通したものの考え方である。我々が会社などの集団に居心地の良さを感じるのは(感じない人も最近は多いと思うが)、あるフレームワークを共有しているからだ。つまり細かいことを言わなくても分かり合える関係と言ってよい。

ところが親兄弟や親せきといっても長年別々に暮らしているとものの考え方が違ってくる。つまりフレームワークが違ってくるのだ。

大きな話をすると今の時代は世界的に見て、フレームワークが複数化しているということができる。例えばアメリカ大統領選挙では、アメリカ社会のフレームワークに大きな亀裂が入っていることが見えてきた。リーマンショック前のアメリカには「アメリカンドリーム」という神話があった。つまり誰でも真面目に働いていると家一軒は持てるという神話だ。また少し前の日本には成長神話があった。

アメリカンドリームや成長神話はその時代のフレームワークであり、その中で人々は方法論を議論することができたが、社会全体をフレームワークが崩れて人々がそれぞれのフレームワークを持つようになると話は中々まとまらなくなる。

相続の問題について考えると直系的家族制度と核家族、さらには単身世帯というフレームワークが併存し、生命観や葬儀・墓の問題についても様々な価値観つまりフレームワークを個々の相続人が持っているので、話は中々まとまらなくなっているというのが現状だろう。

ひっよとすると日本という国は相続の問題について最もフレームワークが複雑化している国ではないか?と私は感じている。

例えばアメリカの場合「親の稼いだ財産は親の世代のものであり、親は自由に処分する権利がある」というフレームワークが社会で共有されていると思う。

ヒンズー教文化の社会では「総ての生物は輪廻転生するから、死は肉体の消滅に過ぎず魂は永遠である。だから必要以上にこの世の命に拘ることはない」という考え方が社会を通底している。つまり大きなフレームワークがあるのだ。

だが社会に共通するフレームワークがなく、また相手のフレームワークを理解するコミュニケーションにも欠ける日本においては家族間でも争いが起きる可能性が高い(いや家族間だからか?)

相続争いという問題を考えていくと今の日本の社会を支えるフレームワークが脆弱であると改めて感じだ次第である。

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増える訪日外国人旅行客~その影響を考えてみた

2016年11月17日 | ニュース

昨日(11月16日)に観光局が発表したデータによると、今年1月~10月の訪日外国人旅行客が2,011万3千人と初めて2千万人を突破した。 

外国人観光客の増加はアベノミクスが具体的成果を上げている分野の一つで、政府は今春に2020年には外国人観光客を4千万人に、2030年には6千万人に引き上げたいとしている。

外国人観光客の増加率からみて、政府の強気の目標を後押ししたいところだが、大きなボトルネックがある。その一つがホテルの部屋数だ。

現在日本のホテルの部屋数は約80万室である。1日当たりの外国人観光客の来日数を6.6万人(ハイシーズンには月200万人訪日するので30日で除して6.6万人)、1観光客あたりの滞在日数を5日(アジアからの訪日客を前提)として考えてみると、1ケ月に必要となるホテル室数は6.6万×5×30日=990万室となる。これに対して部屋の供給数は80万室×30日だから2,400万室である。これでホテルの41%は外国人宿泊者ということになる。

外国人観光客が倍になると、1ケ月に必要となるホテル室数は1,980万室になり、常時ホテルの82%以上を外国人観光客が占めることになる。

上記の計算は外国人観光客数と滞在日数に注目した単純計算で、まず日本人宿泊数はカウントしていない。次に地域的な観光客の偏りも季節的な偏りも考慮していない。日本人のホテル利用者を加えると現在でも、地域や季節によってはホテルの予約が困難あるいはルーム料金が高止まりという状態が続いているが、ホテルの増室なしにこれ以上外国人観光客が増えると、人気の高い地域では、ホテルの予約が困難な状況が多発することは間違いない。

対策は3つある。それは①「ホテルを増室すること」②「旧態然とした旅館を外国人旅行者に利用しやすい形態に変えて活用する」そして3番目が③「民泊の活用」である。

それぞれの対策にはボトルネックがある。ここでは②について簡単に考えてみた。

②の旅館の活用についてだが、現在の旅館の室数は70万室程度であるが、次の問題がある。まず「外国人旅行客が訪問したい地域と旅館の存在する場所が必ずしも合致していない」という問題だ。京都のような大観光地を例外とすると、頑張っている旅館は外国人がまだ訪問していない地域に多く存在すると私は考えている。この観光資源を活かすには、外国人観光客特にリピーターの眼をいかに地方に向けるか?という観光政策が重要だ。

外国人観光客のニーズは多様だから、「布団+和式風呂」という形態も十分受け入れられる余地はあると思うが、旅館の食事については疑問が残ると私は考えている。それは和食が敬遠されるということではなく、宿泊料を高くするために過度に豪華に見える食事が敬遠されるのではないか?ということだ。

一旅行者として私が旅館を利用する場合も「過度に豪華な食事」には辟易することがある。高齢者になってくるとカロリー制限などを考えるから、日本人にとっても過度に豪華な食事は不要であり、もっと簡素な食事(あるいは外食)にして、その分宿泊料金を下げて欲しいと思う。

以上のようなことを踏まえて、旅館の活用は喫緊の課題で、利用しやすい旅館の在り方について知恵を出し合う時期に来ていると思うのである。

③の民泊の利用も大きな課題だ。

Airbnb(エアービーアンドビーと読むそうだ)というアメリカ生まれの民泊斡旋会社は日本の民泊市場を潜在成長性の高い市場とみてマーケッティングに力を入れている。ただし民泊については旅館業法等との関連でグレーゾーンがある上、十分知見を持ち合わせていないので、ここではコメントを差し控える。

人口減少が進むと見込まれる中で外国人観光客の増加は明るい話題だが、宿泊施設の増強は喫緊の課題だ。本当にこれ以上観光客を増やすことができるかどうかはここにかかっている。

 

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