昨日(11月23日)米国商務省が発表した10月の耐久消費財受注は、予想(+1.5%)を上回る4.8%増となった。もっとも4.8%増加したのは、「全」耐久消費財受注額で、変動幅の大きい民間航空機の受注が大きく伸びたことが大きい。
より投資家が注目するコア資本財(航空機を除く非国防資本財)については、前月比0.4%の増加だった。ブルンバーグ日本語版のニュースのタイトルは「コア資本財は0.4%増、前月は1.4%減に下方修正」となっているが、ReutersのタイトルはUS durable goods orders up 4.8% in Oct vs 1.5% increase expectedとなっていて増加幅の大きかった全耐久消費財を見出しにしている。
景気が良くなってくると更に景気が良さそうな数字に目が行くという例かもしれない。
いずれにせよ堅調な耐久消費財受注は、住宅統計などとともに米国の景気が極めて堅調に推移していることを裏打ちした。
耐久消費財については、新大統領のトランプ氏がインフラ投資の強化を宣言しているから今後も伸びが予想される。
好調な経済統計を受けて、ドル指数は10年ぶりの高水準に達した。金融先物市場では来月13-14日に開かれるFOMCでの政策金利引き上げはほぼ確実視されており、関心事は早くも来年6月の利上げ動向に向かっている。
さて今月の米国大統領選挙以降急速なドル高や米国株高が起きているが、トランプの勝利とどれ程関係があるのか?あるいはクリントンが勝っていたらこのようなラリーは起こらなかったか?などと考えてみるのも頭の体操としては面白いだろう。
例えば10月の耐久消費財受注はトランプの勝利とは関係ないものだ。つまり米国経済は確実に良くなっており、12月の政策金利引き上げはほぼ確実だったということになる。
ただ法人税の大幅引き下げなど企業に優しい政策を掲げるトランプの勝利により、経済成長が加速する見通しが高まっていることは事実だ。
アトランタ連銀は第4四半期の経済成長率見通しを3.6%に引き上げた(6-9月の実績は2.9%)。これらのことから更なる利上げが視野に入りドル高を加速している。
もっともトランプ新大統領の政策はまだ全貌が見えないので、まったくの期待の買いであることは間違いない。
お釈迦様に「毒矢のたとえ」という話がある。ある修行者がお釈迦様に「この世は永遠に続くものなのか?有限なものなのか?」ということを尋ねた。お釈迦様はその問には直接答えず「毒矢が刺さった時、お前はその毒矢が誰が放ったものか?などと聞くだろうか。大事なことはそのようなことではない。まず毒矢を抜くことなのだ」と諭されたという話だ。
今はトランプの政策が何なのか?という答えの見つからないことを考えるより、ドル高株高というモメンタムに乗る方が良さそうである。
ただしこれが一種の幻想という面を持っているということを忘れてはいけないが。