惑星ダルの日常(goo版)

(森下一仁の近況です。タイトルをはじめ、ほとんどの写真は交差法で立体視できます)

新宮市のSF

2008-12-25 19:50:41 | 本と雑誌
 ホームページに日本各地を舞台にしたSFを紹介する日本全国ご当地SFというコーナーを設けています。今日、そこへ新たな投稿があったのですが、なぜかサーバーに接続できない状態が続いていて、更新不能なのです。面白い内容なのに、残念。

 とりあえず、以下に投稿内容を貼っておきます。タカアキラさん、ありがとう&ごめんなさい。通信が回復し次第、本来の場所に掲載しますので、どうぞお待ちくださいm(__)m


和歌山県新宮市
  • 『小さくなった町』(原周作)
     こんにちは。本の雑誌社のタカアキラ(浦高晃)です。最近、ご当地SF作品を発見したので本日はその報告をメールいたします。

     ご紹介するのは、原周作『小さくなった町』(学習研究社、1972年刊)という本です。
     宇宙からの光線によって和歌山県新宮市という一つの町が丸ごと、人間がアリくらいの大きさまで縮小してしまう。というお話でミクロの世界でのサバイバルが描かれています。

     現在私は本の雑誌社というところで書籍編集をしています。
     先日、〈WEB本の雑誌〉にある読書相談室というコーナーの書籍化まとめ作業を行ったのですが、そちらによせられた質問に以下のようなものがありました。

    • 年齢:45~49歳
    • 性別:男性
    • 質問内容:
       わりと古い話になります。
       わたしが小学生のころ(おそらく昭和45~6年)、学研が小学生向けに発行している雑誌の「学習」か「かがく」に連載されていたSFジュブナイルについて質問です。
       内容は、宇宙からの謎の光線を浴びて町がまるごとミクロ化してしまう、というものでした。「巨大な小動物」が現れたり、街の外れまで行くとそこは砂漠になっていたりという場面を覚えています。(オチは書きません)
       この話をもう一度読んでみたい気がします。その後この話が単行本になったかどうか、ご存じでしょうか?
       また、なったとすればその作者名とタイトルを教えてください。
       どうぞよろしくお願いします。

     私は昭和51年生まれですが、小学校の図書館でこの作品を読んだ覚えがありました。
     読書相談室員にはSFに強いレビュアーの三村美衣さんもいらしたのですが、三村さんにも心あたりがなく、結局刊行までにタイトルはわからないままでこのこの相談とそれに対する回答を単行本に収録することはできなかったのです。
     しかし、先日打ち合わせで北原尚彦さんのお家にうかがわせてもらったときに、このお話をしたら「刊行年と版元でだいたいの見当がついているなら石原インデックスを調べてみればわかるかも」と調べてくださり。あっというまにタイトルがわかりました。

     タイトルがわかったので図書館で取り寄せて読んでみました。 下の写真はその書影です。

     http://mixi.jp/show_diary_picture.pl?owner_id=34416&id=1027424258&number=205

     今読み返すと、パルサーからの放射線が、アポロ11号が月においてきた鏡によって反射して変質してミクロ作用が発生! というのはいささかSF的には大味かもしれませんが、ミクロ化した世界では、普通の雨でも大惨事になったりだとか、アリや蜘蛛が驚異となる世界で、住人で組織された探検隊が、電気、電話、水道の共同溝を目指して、町の回りに出来た荒野を超えていく緊張感溢れる冒険行など、もし、人間がミクロサイズになったら…という「if…」の世界を舞台に描いていて、ストーリー的にも極限状況化で人間のもつ底力を礼賛するというジュブナイルSFの佳作でありました。
     巻末の略歴によると、著者の原周作氏は大阪府農林技術センターの研究員だったそうです。
     他にSF小説を書いていたかまではわかりませんでした。
     是非、ご当地SFのリストに加えご紹介ください!

    タカアキラさん(2008年12月)