中山千夏『芸能人の帽子』(講談社)を読み始めたところです。
最初に書かれているのが、「ひょっこりひょうたん島」に出ていた頃のこと。千夏さんは「博士」の声を担当していましたね。
この連続人形劇がNHKテレビで放映されたのは、1964年4月6日から1969年4月4日までだとか。私が中学に入った時から高校3年の春まで。たぶんターゲットはもっと下の世代だったのでしょうが、私も夢中になりました。クラブ活動のある日は無理だったけど、そうでない日は、必死で早い汽車に乗って帰宅し、午後5時45分からの放送を観たように思います。
なぜ、それほどに惹きつけられたのか?
千夏さんの記述に、その秘密を見たように思います。
こんなふうに書かれています――
二人の脚本家(森下註:井上ひさし&山元護久)が、毎回、呻吟の果てに絞り出す物語と会話には笑い死にしそうなとびきりの冗談と、そして果てしない自由への希望が横溢していた。(中略)多少とも管理の息苦しさに悩んでいたあの時代の子どもたちが、こぞって毎夕、あの十五分間を心待ちにしたのも、もっともだろう。
まさにその通り! と叫びたくなりました。大学進学を目標にした学校生活に、私も息苦しさを覚えていたのです。
それにしても、ここに描かれる放送局の空気は実に素敵。使命感と意味込みと遊び心とが混然とした現場の空気は、あの時代ならではだったかも。ただ、放映が終了して5年後、私が田舎の放送局に入った時も、その名残りは十分に残っていたように思います。
あの雰囲気を知っているのと、そうでないのとでは、その後の人生観がずいぶん違ってしまうだろうなぁ。今でも「ひょっこりひょうたん島」のテーマソングはたまに歌います。