別役実さんが今月3日に亡くなられたとか。享年82。
劇作家でエッセイスト、童話作家、評論家など、多彩な著述活動をなされました。ま、基本的には不条理演劇の第一人者ということになるでしょうけど。
「べつやく・みのる」と呼ばれましたが、お父さんが高知の人なので本当は「べっちゃく・みのる」なのだと思います。高知では「別役」は「べっちゃく」なのです。香我美町にある集落の名が起源とされています。娘さんはユニークなイラストレーターで「べつやくれい」と名乗っておられますね。
別役実さんの文章が大好きです。舞台は見たことがなく、もっぱら本を読むだけのいけないファンですが。
出会いは、私が大学3年の頃(1972年)だったと思います。NHKテレビ「おかあさんといっしょ」の、毎週1回あった「おはなしこんにちは」というコーナーで、別役さんが書き下ろされた童話が朗読されていて、たまたまそれを視聴し、すっかり魅了されてしまったのです。後に『淋しいおさかな』(三一書房/PHP文庫)にまとめられる作品群で、何度も読み返しました。大傑作。
その後、戯曲を活字で読んだり、『虫づくし』などのエッセイや犯罪に関する評論など、ずいぶん楽しませてもらいました。どうもありがとうございました。
大学生の私がなぜNHKテレビの「おかあさんといっしょ」を見ていたかについて付記しますと、当時、江東区で倉庫兼住宅の屋根裏部屋のようなところを借りていたのですが、そこの大家さんが、「これいらないから、良かったらどうぞ」と、古い白黒テレビを譲ってくれたのです。あまり見ずに、もっぱらラジオばかり聞いていたように思いますが、この番組だけは別で、夕方の再放送を見たくて、放映日は学校から急いで帰ったように記憶しています。
「おはなし」があまりにも面白かったので、それを朗読している田島令子さんまでお気に入りになったほどでした。