金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ちょっとだけミニマリズムを目指そう

2012年08月16日 | うんちく・小ネタ

ミニマリズムとは1960年代の米国で影響を持った芸術運動で、形態や色彩を最小限に抑えようとするものだ。だが昨今英語のブログなどで使われるミニマリズムとは、所有物を極端に抑えた生活態度を指している。

ニューヨーク・タイムズにCarl Richardsというファイナンシャルプランナーが、「あなたは恐らくものを持ちすぎじゃないの」というエントリーを書いていた。その中で紹介されているのが、アンドリュー・ハイドというブロガー兼インターフェイスデザイナー。http://andrewhy.de/the-15-things-i-own/

ハイドさんはたった15のアイテムだけを持って世界を旅行した。15のアイテムというのは、バックパック、シャツ、レインジャケット、タオル、財布、iphoneなどだ。

ハイドさんは「成長する時に、大きな家をモノで一杯にすることがゴールだったのではないか?だが、モノを成功のモノサシとする考えを拒否することで、はるかに質の高い生活を見出すことができた」と述べている。

このような考え方は、宗教者の中でははるか昔からある。禅宗の雲水は行李一つに応量器と呼ばれる食器セットと正法眼蔵等僅かな所持品のみを持って修行して歩く。だが宗教者だけではなく、立派な人生を送った人の中にもこのような考え方をしている人はいる。

好きな作家である藤沢周平に「書斎のことなど」というエッセーがあり、その中で彼は「・・・書斎らしい書斎が、私の家にはない。私の部屋にあるのは、本棚三つと机がひとつ。・・・なぜこうなのかということを、理由をはぶいて結論だけ言えば、私は所有する物は少なければ少ないほどいいと考えているのである。物をふやさず、むしろ少しずつ減らし、生きている痕跡をだんだんに消しながら、やがてふっと消えるように生涯を終えることが出来たらしあわせだろうと時どき夢想する」と述べている。

とは言っても、持ち物を15品目に絞り込むことや、行李一つにまとめることは現実的ではない。前述のハイドさんも今の所持品は約60に増えているそうだ。

Richardsさんはエントリーの中で「まず毎シーズンの終わりに、衣服をチェックしてそのシーズンに一度も袖を通していないものがあれば処分しなさい。処分するといってもeBayで売却するのではなく~それには時間という別のコストがかかるから~、チャリティに寄付して税金の還付を受けるのが良いです」と述べている。

自分自身について考えると、毎日のように通勤しなくなった今は、クローゼットや下駄箱の中を大整理するチャンスだ。

だが中々作業は進まない。簡単にいうと「このフェラガモのネクタイ、結構高かったよな」とか「今すぐ履かないにしても、履ける靴を捨てるのは惜しいよな」などという邪念が作業を妨げるのだ。だが幾ら高かったものでも使わないものは価値がない。万一に備えて取っておいたものを使うことはまずないだろう。

山屋の目線でものを考えると、自分が担いで登ることができる登山用ザック一個分の荷物が、世の中を渡っていく上で必要にして十分な荷物の量なのだ。

所持品を絞り込んで、軽快に山を登る、という原点に帰って、日常生活を見直そうと私は考え始めている。

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米国年金基金、長期社債のウエイトを高める

2012年08月16日 | 金融

今日(8月16日)の日経新聞朝刊のトップは「企業年金、株から債券へ」という記事。お盆休みで、トップを飾る経済記事がなかったのだろう。記事は格付投資情報センターによると5年前に較べて、年金資産に締める国内株式の比率は11%下がって16%になっていると報じている。一方国債などの国内債券が27%から35%に高まっている。

年金基金の債券シフトは、米国でも顕著だ。ただし米国の基金が買っているのは社債だが。

FTによると、調査会社ディーロジック調べでは、今年発行された企業の30年債の合計額は863億ドルで、昨年1年間の発行総額847億ドルを抜いた。発行者側の低コスト資金調達意欲と企業年金等投資家の国債代替投資ニーズが一致して、超長期社債市場が活発化している。

米連銀によると、今年の年金基金は、無視できるほど少額しか国債を購入しておらず、社債の購入を増やしている。長期金利は低下傾向にあり、長期社債の年初来のリターンは、中期債社債のリターンを3%以上、上回る9.9%。また20年超の国債リターンを5%以上上回っている。

米国の年金基金が、超長期社債を購入している理由は「年金債務の免疫化とアウトパフォーマンスを求めない慎重な姿勢」とアライアンス・バーンスタインのクレジット・ヘッドは述べている。

「年金債務の免疫化」という言葉は、一般には余り耳にしない言葉だ。今世紀の初め頃から米国で提唱された年金運用戦略の一つで、immunizationイミュナイゼーション(免疫化)と呼ばれる。これは将来の各年に発生する年金給付額(キャッシュ・フロー)と等しい金額のゼロクーポン債を各年に満期を揃えて保有する、というものだ。

イミュナイゼーション戦略をとると、金利変動があっても~金利が低下すると、年金債務・年金資産の現在価値は増大し、金利が低下すると減少する~年金基金は金利変動リスクを排除することができる。

年金基金がアウトパショーマンスを求めるということは、イミュナイゼーション戦略以外にリスクを負担して、追加リターンを狙うということだが、現在の米国年金基金はリスク負担を減らしているということだ。

日本には米国ほど分厚い社債市場がないので、基金はやむなく国債を買っているということなのだろう。「社債市場の充実」などということも、高齢化社会のインフラ整備として必要だったのだろうが、果たせぬ課題のまま、超高齢化社会に突入、ということなのだろう。

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