FTによると欧州の自動車メーカーの株式の空売りが過去2年で最高のレベルに達している。欧州あるいは中国の景気減速で、自動車の売上が減速するので、今の株価は維持できないと投機筋は見ているのだ。
ユーロの下落(昨年6月から対米ドルで13%、対円・対人民元で14%下落)により、欧州の輸出企業は、ある程度メリットを得ている。フォルクスワーゲンはユーロ安の影響は、為替ヘッジ考慮後で、今年前半で営業利益を5億ドル押し上げたと述べている。
しかし対照的に欧州市場をターゲットとするプジョー、GMのオペルなどは、赤字が続いている。
UBSのアナリストは、BMWのように輸出競争力の強い自動車メーカーの株を買い持ちしようと思うなら、同時にプジョーのような株価が下がる見込みの高い株を空売りしておくべきだ、と述べている。
ユーロの下落は、確かに多角化した欧州の大手企業にメリットを与えている。FTは大手製薬会社のサノフィ・アベンティスのような会社は、欧州に主要なコストベースを持つけれども、欧州自体の売上は全体の4分の1にすぎないので、欧州の景気減速の影響より、ユーロ安によるコスト効果が大きいと述べている。
ある通貨圏の経済状態が相対的に悪くなると、その通貨の価値は下落し、輸出競争力が回復する。しかし通貨価値の下落によりメリットを受けるのは、他の通貨圏で強い競争力を持つドイツの高級車メーカーやフランスの製薬会社、高級ブランドメーカーなどである。
その通貨圏を主な市場とする企業は、むしろ経済状態の悪化による売上・利益の減少に苦しむことが多い。
さて欧州とは反対に円高が持続している日本。円高とそれによるデフレでメリットを得ているのは、消費者、特に年金生活者であり、デメリットを被っているのは、輸出企業である。生産拠点を海外に展開する力のある企業は比較的円高の影響を緩和しやすいが、それができない中小メーカーは大変である。
日本政府は高齢化に合わせて、円高を黙認しているのであろうか?