先日NPO法人「シニア大楽」の「講師のための話し方講習会」に参加した時、「講演はスタート5分で決まる」という話の中で「3・3・3の法則」を聞いた。もう少し詳しく説明すると「シニア大楽」の「大楽」は「だいがく」と読ませている。このNPO法人は「会社を定年退職した人で講演会の講師をしたいという人と自治体の市民講座などの橋渡し」をしている団体で、最近マスコミに取り上げられていた。
ホームページから講師登録をすると「登録しました。つきましては講演のご経験があっても当法人が企画する話し方講習会に参加してください」という返事があったので参加してきた次第。
さて「講演はスタート5分間で決まる」の話に戻ると、講師はまず「3・3・3の法則」というアメリカの心理学者ズーニー教授が唱えた説があると話を始めた。
3・3・3の最初の3は3秒で第一印象つまり身なり・服装で利き手の印象が決まるという。次の3は30秒で話始めの態度、声の大きさ、調子などで話の性格が判断される。最後の3は3分で、話始めの3分でその講演が面白そうか、聞く価値があるか判断される。
というルールだそうだ。
ブログに紹介するにあたり、ズーニー教授の学説をネットで調べてみたが、ピタリとくる結果は得られなかった。まずズーニーという心理学者がいない。ただしズーニンZoonenという心理学者はいたのでこの人のことではないか?としてもう少し調べてみた。するとZoonen氏は「人と人の出会いで最初の4分間がすごく大事。ここで良い印象を与える必要がある」という4分間ルールを提唱していることが分かった。しかし3・3・3の話は出てこない。
3・3・3ルールということでネットを調べてみると「遭難救助の法則で最初の3は30秒これは呼吸ルートを確保するための余裕時間。次の3は3日間で水があれば人は3日はサバイバルできる。最後の3は3週間で食糧があれば3週間は生き延びることができる」という趣旨の説明があった。最初の30秒を補足説明すると新雪雪崩に埋もれて遭難死する場合の直接的な原因は酸素不足による窒息だ。つまり雪の埋もれて息ができなくなってしまう。雪崩の救助で初期動作が重視されるのはこのためだ。
3・3・3ルールはこれ以外にも組み合わせがあるようだが、災害救助系のルールになっているようだが、少なくとも日本では「講演関係の法則」としては定着はしていないようだ。私が勝手に想像すれば、誰かが聴衆を引き付ける講演のあり方として語呂のよい3・3・3を思いつき、箔をつけるために米国の心理学者の名前を引っ張ってきたのではないか?ということになる。
しかしこの法則?の氏素性は別として、講演の最初の印象やインパクトが非常に大事であることは間違いない。
私のように企業生活を長く経験してきた人間は、実のところ「聞かせる話」というものにあまり注意を払ってこなかったような気がする。つまり「仕事として」「職制を通じて」話をする機会が多かったので、聞き手の関心を引き付けるということを重視していなかった。また話の内容は「情報の伝達」が中心で、聞き手の心に働きかけ、行動を起こさせるようなものでは必ずしもなかったと私は思っている。
だが講師として色々なところで、多様なバックグラウンドや関心を持った人の心を短時間でつかみ、飽きさせない話をするというのは「完全に一つの技術」である。技術である以上勉強し学ぶべきだと感じている次第。
ところで余談になるが先ほど述べた4分間ルールについて英語のサイトをブラブラ眺めているとある共稼ぎの夫婦が面白い4分間ルールを作っているという話にであった。それは何か?というと夫も妻も帰宅してお互い一日の出来事を話すとき、とにかく最初の4分間は悪い話(たとえば何々の件はとても不愉快だったとか)をしない、というルールである。これだけのことでその日の残りの時間が随分楽しくなるそうである。
3・3・3の法則にしろ4分間ルールにしろ、参考になるところは多いが、かなり手作りっぽい感じはする。3とか4などの数字を使いながら私も何か日頃の行動規範となるようなルール作りをしようかな?と考え始めている。