金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

生煮えな「小さいおうち」

2014年02月19日 | 映画

山田洋二監督の映画「小さいおうち」を観てきた。封切後3週間ほど経つが、雑用や関東地方の大雪などが重なって中々観に行くチャンスがなかったのだ。だが女中役を演じた黒木華がベルリン映画祭で最優秀女優賞を獲得したことにも背中を押されて出かけた次第。

まずザックと感想を述べると「色々な具材が入っていて少し懐かしい感じはするがほとんど生煮え」というのが私の印象である。

東京大田区の赤い屋根のモダンな住宅(平井宅)で女中として働き始めたタキはその家の一人息子の看病などを通じて、奥さんの時子(松たか子)に可愛がられていく。その頃南京が陥落(1937年昭和12年)。時局は泥沼化に向かっているが、平井宅に集まるおもちゃ会社の幹部たちは目先の勝利に浮かれていた。

そのおもちゃ会社の若い新入社員(吉岡秀隆演じる板倉)と時子は道ならぬ恋に落ちていく。もっとも映像は抑制的で肉感的な感じはしないが、一方何故二人が道ならぬ恋に落ちていくのか十分説明的でもない。

そもそもご主人(片岡幸太郎)と奥さんは仲が悪いのか?意思の疎通が不十分でご主人が一方的なところはあるが、戦前の家庭の平均から考えると普通程度ではないだろうか?

この夫婦は東京大空襲で赤い屋根の自宅を焼かれ、自宅前の防空壕で抱き合って死んでいったと映画は説明するので夫婦仲がひどく悪かったとは思われない。またご主人が浮気をしていた形跡もない。なのに何故奥さんは若い板倉に惹かれていくのか?それは板倉の持つ「初々しさ」「弱さ(徴兵検査は丙種合格、でも最終的には招集された)」「優しさ」が女心を揺さぶったのか?

二人の道ならぬ恋を知るようになったタキもまた密かな思いを板倉に寄せていた。そしてタキは奥さんがタキに託した板倉宛の手紙を渡さずに生涯の秘密として隠し持ち続ける・・・・・

というお膳立てなのだが、色々な具材は力不足で生煮えだと私は感じた。

まずタキが秘密とした手紙の重みだ。所詮人妻が間もなく入営する若い男を最後に一目見たいと呼び出す手紙なのだ。生涯の秘密にするほど重みがあるのか?というのが私の印象だ。

道ならぬ恋を可とするか不可とするかは別として、それが命を懸けたもので、世間体もはばからずというのであれば、それはそれなりに緊張感はあったのだが、「戦時下に人妻が喫茶店で若い男とひそひそ話をしているのは人聞きが悪い」という程度では恋愛話としては生煮え過ぎる。

この映画には通奏低音として「反戦」思想が流れているという人がいるが、その音はあまり私には響いてこなかった。むしろ日中15年戦争の最中の昭和12年頃の日本は意外に明るくモノも豊富だったことや、多くの庶民が目先の勝利に浮かれている様が印象深かった。

戦前にノスタルジーを感じる人にはある種のカタルシスをもたらす映画かもしれないが、私には生煮え感が強かった。

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甲武信の大雪、首相は天ぷら食べてちゃいけないのか?

2014年02月19日 | ニュース

ヤフーニュースを見ていると「大雪の日、安倍首相は官邸におらず私邸にいた。夕方から赤坂の天ぷら屋で支持者と会食していた。これに対し前衆議院議員の三宅雪子さんなどから『大雪で何も口に出来ず立ち往生している人がいるのに、首相は庶民に手の届かない高級料理店で天ぷらを食べている。せめて会合を官邸でできなかったのか?』と批判が寄せらている」という記事があった。

もちろんこういう批判は大部分筋違いであり反論する必要もないが、あえてコメントを書いておくと次のようなことになる。

  • 首相が赤坂の天ぷら屋で夕食をしようが、官邸で夕食をしようが、雪で立ち往生している人の状況には変わりはない。
  • 首相の姿勢を批判する人の頭の中には「仁徳天皇の民のかまど」の話があるのかもしれない。仁徳天皇が即位して4年目に高台から里を見渡すとかまどの煙があがっていないことに気付いた。そこで天皇は3年間年貢を免除したという話である。美談ではあるが、もし「国に困っている人がいる間は首相は外食してはいけない」などということが倫理の基準になると、首相はおそらく永遠に外食は不可能だ。たまたま甲武信(山梨・埼玉・長野の旧名)の大雪は大きなニュースになったが、他にもニュースになる・ならないは別として不幸な人・立ち往生している人は沢山いて、永遠になくなることはないからだ。
  • 「高級料理店で天ぷら」を批判するのは、レベルの低いjealousyに過ぎない。首相が自分の金(ここは気になるところだが)で、食事をする限り天ぷらを食べようがウナギを食べようがどうでもよい。

☆   ☆   ☆

ということでこの安倍首相批判は論理的な根拠はないが、安倍首相の人気に陰りがでていることは注目しておいて良いだろう。人気とは一種の免疫力のようなもので、人気が高い時は少々の失言や軽率な行為でも人々は大目に見る。だが人気という免疫力が低下すると些細なことで批判を浴び、不人気が加速するのである。

安倍首相の人気の陰りの原因はなにか?それはアベノミクスのある部分のメッキがはがれてきたことである。一例は円安の国民経済に与える効果だ。円安は一部の輸出企業の業績を改善し昨年株価は上昇した。しかし反面エネルギー価格など輸入物価の上昇を招き、消費者の懐を痛めている。また円安は「一部の輸出企業の業績を改善した」と書いたが円安による輸出競争力の改善には限界がある。それは多くの企業は「円高に強い」ように体質改善したので、円安効果にも限界があるからだ。

問題は賃上げを通じて「民のかまど」に力強い煙をあげることができるかどうか?なのだが人気の陰りはこのことに懐疑的な見方をする人が増えていることの表れなのかもしれない。

外交問題についていうと、「後ろ盾の米国が反対しているのに靖国問題で中国のテンションを高めて大丈夫なの?」ということだ。喧嘩をする時は相手を選び、味方を固めておくというのが鉄則のはずだ。

私は天ぷら屋議論は論理的な議論ではないと思っているが、批判者の情動知が首相の「驕りの兆し」を感じ取っているとすればその部分は注目しておきたいと感じている。

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