昨日(6月4日)ニューヨークダウは高値を更新した。既にS&P500とナスダックは高値更新しているからこれで米国株の代表的三指数が揃って新高値を付けたことになるが、株高に警鐘を鳴らす声も聞こえる。
CNBCは「ダウの高値更新をあんまり歓迎していはいけない。次の10年間のリターンはちっぽけなものになる」というモルガンスタンレーのストラテジストの意見を紹介していた。
ダウ平均の過去10年のリターンは18%近くになるが、モルガンスタンレーは「株式6割債券4割という伝統的なポートフォリオの今後10年の予想リターンは4.1%に留まる」と予想している。
預金金利がほぼゼロという状況では、4.1%でも素晴らしいリターンだ、という声もあるかもしれないが、過去10年の株式・債券のパフォーマンスを見るとみすぼらしいと言わざるを得ない。
米国10年債について2010年の3.8%から直近の1.8%に利回りは2%に下落している。10年物債券の利回りが1%下落することは債券価格が10%近く上昇することを意味する。
またPER(株価収益率)は10年間で16.9倍から19.6倍に上昇した。
これらの現象は金融緩和策で大量の資金が株式市場と債券市場に流入し、債券利回りの低下(価格は上昇)と株価の上昇を招いた結果である。
易経は「亢龍(こうりょう)悔いあり」という言葉で「昇りつめた龍は降るしか道がないので後悔する」と昇り詰めることのリスクに警鐘を鳴らしている。
易経の時代には株式相場はなかったが、人事や富を蓄積する上では昇り詰めて墜落する人がいたのだろう。
株価という龍が余りに早いペースで上昇を続けるとコレクション(水準訂正)が起きる。「山高ければ谷深し」という相場の格言どおり、上昇速度が早過ぎる場合は下落は大きなものになる。
今後10年間の平均的なリターンはモルガンスタンレーが予想するようにこれまでの10年間より相当低いものになる可能性は高いが、個々の投資家のパフォーマンスは投資を行う時期で異なる。退職者の場合、退職金で株を買うタイミングにより、高値掴みで泣いたり、ボトムフィッシングでほくそ笑んだりする人がでるだろう。
ただ「これから先の方が投資環境は悪い」と保守的に考えておく方が人生設計上賢明であることは間違いない。