今日(11月21日)日経金融新聞朝刊(ネット版)にみずほ銀行の苦難を示す記事が2つ載っていた。内1本は緊急性の低いいわゆる埋め草記事だったので、昨日は重要な経済ニュースがなかったのだろう。
一つ目の記事は「みずほ銀行などメガバンクが、ソフトバンクGと3,000億円規模の融資について協議している」という話だ。貸出難に悩む邦銀としては、一見ありがたそうな話に見えるが実は単純に歓迎できる話ではなさそうだ。
理由はソフトバンクの信用リスクにある。ソフトバンクの長期債格付を見るとS&PはBB+、ムーディーズはBa1である。この格付は非投資適格なのだ。一般にジャンクボンドとかハイイールド債券といわれるカテゴリーの格付なのだ。
なぜBB、Baクラスの債券を非投資適格債券と呼ぶか?というとかって米国の商業銀行はBBB格以上の債券のみに投資することが可能だったので、それ以下の格付の債券を非投資適格と呼ぶのである。
もっとも債券投資と融資は違う(倒産時の回収程度が違う)ので、銀行も「慎重に審査しながら」非投資適格企業に融資をすることは多い。ただし1社あたりの融資額や1業界あたりの与信額は抑えて「リスク分散」を図っているはずだし、金融当局もそのあたりには厳しい目を光らせているはずだ。
ちなみにソフトバンクは日本の格付機関からは投資適格格付を得ているが日本の格付機関の格付は海外の金融機関や機関投資家から信頼されていない。つまり筋の良い海外の金融機関や機関投資家はソフトバンクへの融資拡大には相当慎重だ、ということが推測できる。よってこの案件は結構重たいだろう。
次の記事は埋め草記事なのだが、みずほ銀行が基幹職(総合職)と特定職(一般職)の区分を排除して職種を一本化したり、「副業・兼業を認め」「自己都合退職でも再就職先を斡旋する自由定年」を導入するという人事面の話である。
これは簡単にいうと約1.3万人いる一般職の相当部分の仕事がインターネットバンキング化や事務処理の自動化で不要になった。更にマイナス金利が損益に与える影響も大きい。また融資案件の減少等で総合職の仕事も激減しているから、辞めたい人はやめてくれ、銀行もできる支援は行うという話である。
このような悩みはみずほ銀行だけのものではない。程度の差はあるかもしれないが、三菱UFJ銀行や三井住友銀行や多くの地銀も抱えている。
銀行業界の苦境に陥った原因は色々あるが、企業風土の点でいうと「組織への忠誠心を求め、社外のネットワークを重視する人材を異端視してきた」ことに一つの原因があると私は考えている。
今まで社業専念で頑張ってきたのに「これからは副業・兼業も認めるから新しいキャリアパスを考えてくれ」というのは従業員にとってはちゃぶ台返しなのだが、広い世界ではしばしばあることだ。
問題があるとすれば銀行が従業員に忠誠心を求め過ぎた結果、従業員が「変化こそチャンスである」という自立心を失っていないか、どうかという点だろう。