金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

米中貿易協定フェーズⅠ調印は来年に持ち越し?

2019年11月21日 | 投資

今日(11月21日)午前中ロイターに「米中貿易協定フェーズⅠの調印は来年に持ち越されるのではないか?」という観測記事が流れた。このニュースで日経平均は270ポイント(1.2%弱)下落している。

CNBCによるとトランプ政権に近い筋の発表では、中国がより広範な関税引き下げを求め、それに対しトランプ大統領が反対していることが持ち越しの理由だ。

また昨日米国議会を通過した香港人権法案も論争のタネだ。香港人権法案で米国は香港で一国二制度がきっちり守れらているかどうかモニターするといっているが、中国は内政干渉だと猛反発している。

法案は今日にも大統領に回され署名待ちとなる。巷間大統領は署名すると言われているので、もし法案が成立すると近い時期の貿易協定フェーズ1の調印は見込みにくくなる。カレンダー的には次の山場は12月15日の関税引き上げ実施日だ。協定が進まない場合には米国政府は対中国関税を更に引き上げることになる。

 1週間ほど前までは年末にかけて株高が続くだろうという予想が強かったが、センチメントはすっかり変わってしまったのではないだろうか?

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「みずほ銀行」の苦難を示す記事2本

2019年11月21日 | 金融

今日(11月21日)日経金融新聞朝刊(ネット版)にみずほ銀行の苦難を示す記事が2つ載っていた。内1本は緊急性の低いいわゆる埋め草記事だったので、昨日は重要な経済ニュースがなかったのだろう。

一つ目の記事は「みずほ銀行などメガバンクが、ソフトバンクGと3,000億円規模の融資について協議している」という話だ。貸出難に悩む邦銀としては、一見ありがたそうな話に見えるが実は単純に歓迎できる話ではなさそうだ。

 理由はソフトバンクの信用リスクにある。ソフトバンクの長期債格付を見るとS&PはBB+、ムーディーズはBa1である。この格付は非投資適格なのだ。一般にジャンクボンドとかハイイールド債券といわれるカテゴリーの格付なのだ。

 なぜBB、Baクラスの債券を非投資適格債券と呼ぶか?というとかって米国の商業銀行はBBB格以上の債券のみに投資することが可能だったので、それ以下の格付の債券を非投資適格と呼ぶのである。

 もっとも債券投資と融資は違う(倒産時の回収程度が違う)ので、銀行も「慎重に審査しながら」非投資適格企業に融資をすることは多い。ただし1社あたりの融資額や1業界あたりの与信額は抑えて「リスク分散」を図っているはずだし、金融当局もそのあたりには厳しい目を光らせているはずだ。

 ちなみにソフトバンクは日本の格付機関からは投資適格格付を得ているが日本の格付機関の格付は海外の金融機関や機関投資家から信頼されていない。つまり筋の良い海外の金融機関や機関投資家はソフトバンクへの融資拡大には相当慎重だ、ということが推測できる。よってこの案件は結構重たいだろう。

 次の記事は埋め草記事なのだが、みずほ銀行が基幹職(総合職)と特定職(一般職)の区分を排除して職種を一本化したり、「副業・兼業を認め」「自己都合退職でも再就職先を斡旋する自由定年」を導入するという人事面の話である。

 これは簡単にいうと約1.3万人いる一般職の相当部分の仕事がインターネットバンキング化や事務処理の自動化で不要になった。更にマイナス金利が損益に与える影響も大きい。また融資案件の減少等で総合職の仕事も激減しているから、辞めたい人はやめてくれ、銀行もできる支援は行うという話である。

 このような悩みはみずほ銀行だけのものではない。程度の差はあるかもしれないが、三菱UFJ銀行や三井住友銀行や多くの地銀も抱えている。

 銀行業界の苦境に陥った原因は色々あるが、企業風土の点でいうと「組織への忠誠心を求め、社外のネットワークを重視する人材を異端視してきた」ことに一つの原因があると私は考えている。

 今まで社業専念で頑張ってきたのに「これからは副業・兼業も認めるから新しいキャリアパスを考えてくれ」というのは従業員にとってはちゃぶ台返しなのだが、広い世界ではしばしばあることだ。

 問題があるとすれば銀行が従業員に忠誠心を求め過ぎた結果、従業員が「変化こそチャンスである」という自立心を失っていないか、どうかという点だろう。

 

 

 

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