金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「新しい生活様式」テレワークで生産性は向上するのか?

2020年05月04日 | ライフプランニングファイル

今日(5月4日)政府は緊急事態宣言を今月末まで延長することを発表する予定だ。東京都や大阪府など13都道府県についてはこれまで同様の行動制限を求めるが、それ以外の県については感染防止を予防するため「新しい生活様式」の徹底を前提に制限の一部を緩和する方向だといわれている。

 この方針は概ね妥当なものだと思うが、「新しい生活様式」というものがどれだけ国民の腹落ちするかは気になるところだ。専門家会議の発表などを見ると「新しい生活様式」の例にテレワークが挙げられているので、「新しい生活様式」=テレワークと理解する人がいるかもしれない。そのことの可否はさておき、GW後もテレワークが大きなテーマになることは間違いない。

そこで日本でテレワークが定着するのかどうかを少し考えてみた。

まずITmediaビジネスオンラインで目にしたUniposが4月末に発表した調査結果を見てみよう。

  • 新コロナ対策として2月以降にテレワークを実施した企業は全体の48.6%。
  • 生産性の変化に対する一般社員の評価は、「変わらない」が最多で47.7%。「やや低くなった」が36.5%で、「とても低くなった」が8.1%。「チームの生産性が高くなった」と答えた人は7.6%にとどまった。
  • 一方「コロナウイルス感染症が収束した後も会社にテレワーク推進を望むか」という質問に対しては、管理職の56.1%、一般社員の41%が望むと回答した。これは望まないと回答した管理職14.1%、一般社員21.9%を大きく上回っている。

次にCNBCが4月下旬に発表していた米国のテレワークに関する調査結果を見てみよう。

  • コロナウイルス騒動以降在宅勤務を行っている人は42%で自宅外で勤務している人は58%である(自宅外勤務の中にはサテライトオフィスでも勤務も含まれる)。19%の人は初めて在宅勤務を行った。
  • 経済活動が再開された後、在宅勤務を続けるという人は24%で職場に戻る人は55%、未定が20%だった。
  • 生産性については21%の人が在宅勤務により生産性が向上したと判断し、40%の人は低下したと判断した。変わりがないと判断した人は39%だった。
  • 所得階層別にみると、年収5万ドル以下の層では24%が在宅勤務を行い、5万ドル~10万ドルの層では36%が在宅勤務を行い、10万ドル以上の層では46%が在宅勤務を行っている。

この日米の二つの調査は対象者数等に違いがあるので、単純比較はできないが、ある傾向は推測できる。

第一に日米とも「テレワークで生産性が低下した」と判断する人の方が「生産性が向上した」と判断する人より多いということだ。一方日本の半数近い一般社員と米国の4割近い社員が「生産性は変わらない」と回答している点も注目しておいてよいだろう。

第二に「テレワークは所得が高いプロフェッショナルな仕事や管理職の仕事と親和性が高い」ということだ。

経済活動再開後にテレワークの継続を望むかどうかという点について、日米の調査結果は違う方向を示唆しているようだ。つまり日本では約半数の人がテレワークを継続を望み、望まない人(管理職の14%、一般社員の22%)を大きく上回ったの対し、米国では在宅勤務を続ける人が24%で職場に戻ると答えた人55%の半数以下にとどまった。

この日米間の違いをどう判断すれば良いか?は迷うところだが、私は一つは通勤負担をどう判断しているか?が大きく影響していると考えている。つまり通勤負担が大きい日本ではテレワークを増やして通勤負担を回避したいという希望が強いのではないか?と私は考えている。

これはコロナウイルス感染防止策として政府が提唱する「新しい生活様式」と合致するものだ。何故かというと朝夕の通勤ラッシュほど3密(密集・密閉・密接)な世界はないからだ。通勤ラッシュを回避するにはテレワークがもっとも有効である。

そこで次の課題、特に企業側の課題としては「生産性の低下を食い止めながら、在宅勤務を拡大するにはどうすれば良いか?」ということが問題になる。

私は特に検討するべき課題は2つあると考えている。一つは「コミュニケーションとタスク管理」であり、もう一つは「在宅勤務により浮く通勤時間をどう活用するか」という問題である。

前者については「Face to faceのコミュニケーションからチャットを使ったコミュニケーションとタスク管理と成果管理の徹底」が決め手になる。後者について浮いた通勤時間の6,7割は個人の生活の充実に回すとして、残りの3,4割をスキルアップなどの自己投資に使うことで生産性アップを生み出せるだろうと私は考えている。

 

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