外出自粛時の楽しみは読書である。音楽鑑賞やビデオ鑑賞と並ぶ在宅御三家だろう。
兼好法師も「独りともし火のもとに文(ふみ)を広げて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよのう慰(なぐさ)むわざなる」と書いている(第十三段)。
ともし火の下だから夜だ。徒然草には季節は書いていないが「灯火親しむの候」というのは秋のことなのかもしれない。ふけゆく秋の夜、独り灯火の下で中国の詩文集「文選」や「白氏文集」あるいは老荘思想の本を読んで知らない昔の人を友とする時何よりも心が安らぐと法師はいう。
時は春。寝転がって「文芸春秋」を読む。「コロナ対策には入浴が一番」「コロナ鬱を回避するにはどうすれば良いか」など中々実利的なことが書いてある。だが心を安らげるにはもっと非日常・非実利的な本の方がよさそうだ。