金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

徒然草を読む(8)~用事がなく独りでいるのが最高~

2020年05月15日 | 本と雑誌

サラリーマン時代のことだが、絶えず予定が詰まっていて忙しいと言っている人がいた。見ていると先々の予定がないと落ち着かないようで、自分で色々な企画をたてスケジュール表を埋めるのにいそいそしていた。

老後は「きょうよう」と「きょういく」が大切だ、と小話をする人もいる。ここでいう「きょうよう」は「教養」ではなく「今日用」つまり今日の用事である。「きょういく」は「教育」ではなく「今日行く」つまり今日行くところである。退職してぼーっとしていると用事も行くところもなくなるからそれはいけない、用事と行くところを作りなさいという話だ。

だが兼好法師はまったく反対のことを言っている。

「つれづれわぶる人は、いかなる心ならむ。紛(まぎ)るる方なく、ただ独りあるのみこそよけれ」(第75段)

「時間を持て余す人の気持ちが分からない。何の用事もなく、独りでいるのが人間にとっては最高なのだ」

日常の雑事、人つきあい、色々な芸事、学問などとも縁を切れ、と天台宗の聖典「摩訶止観」にも書いてある、と兼好法師は結んでいる。

兼好法師であれば、コロナウイルス感染拡大防止の自宅籠りも奇貨として孤独を楽しんだろうが、我々凡人はそうはいかない。ただしである。発想の転換を図ってみるのも悪くない。

実は我々は環境を変えることはほとんどできない。環境を変えることができると思うのは思い上がりで、手痛いしっぺ返しを受けることになる考えておいた方が良い。地球温暖化などその最たる例だ。

我々にできることは考え方を変えることなのだ。

「縁(えにし)を離れて身を閑(しずか)にし、事にあづからずして心を安くせむこそ、暫く楽しぶともいひつべけれ」

煩わしい関係を整理し、世間づきあいを止めて、ゆったりとした気持ちで自分を取り戻すことこそ真の楽しみというものだ。

今日の午後はぼーっと過ごしてみようか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする