金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

これからの銀行危機はオンラインによる急速な預金引き出しで起きる?

2023年04月01日 | 投資
 今日から4月。先月の欧米の金融界はアメリカの二つの銀行の破綻とクレディスイスのUBSによる救済合併という暴風雨的な出来事があった。
 シリコンバレー銀行の破綻の大きな原因は、長期金利の上昇で手持ち債券の評価損が膨らみ、財務状況の悪化が懸念された中、大量の預金が流出したことだった。
 WSJにA rapid financial world must ready for a slow motion banking crisisという記事がでていた。記事は「金利上昇で債券価格は急落し、シリコンバレー銀行は大きな損失を被った。しかしスタンフォード大学のセル教授たちは米国の銀行の11%(約500行)がシリコンバレー銀行より大きな資産損失を被ったと推計している」と述べている。
 そして「過去に比較して銀行にとっての大きな問題は、バランスシートの資産側ではなく、負債側である」と述べている。
銀行の負債とは預金である。銀行は預金者から預かった預金を払い出し請求に従って払い戻さないといけないから、預金は銀行にとって負債なのだ。
 もっとも「過去に比較して銀行にとって大きな問題は負債側である」という一文には多少違和感がある。1990年代終わり頃の日本の銀行危機を搔い潜ってきた身としては、銀行の大きな問題は資金繰りであった。つまり資金の調達サイドすなわち負債側が問題だったと私は感じていた。
 多くの預金者の方々は、銀行の資産サイドについて正確な情報を持っている訳ではない。当時預金者は銀行の株価を見て、株価が一定水準を切ると預金を引き出し、株価が安定している銀行に預け替えを行っていた。
 3月のアメリカの金融騒動でも同じことが起きた。3月中旬にアメリカの中小金融機関から1,200億ドルの預金が流出し、大銀行の預金は660億ドル増えた。
 ところで信用不安から預金者が銀行の店頭に殺到し預金引き出しを行うことを「取付騒動」という。英語ではBank runだ。預金者が銀行に走っていったのでBank runというのだ。だが今回の急速な預金シフトでは預金者は必ずしも窓口に殺到した訳ではないようだ。何故なら米国では昨年7月からFedNowというリアルタイム決済サービスが実施され瞬時に資金を移動することができたからだ。
 アメリカのオンラインバンキングの普及率は2017年の52%から2021年の66%に増えている。
 ちなみに日本のインターネットバンキング利用率についても6割強という調査結果がある。ただ預金残高が多い高齢者層の利用率は5割程度だろう。
 また法人のインターネットバンキング利用率は3割程度だ。
 インターネットバンキングが大口預金者に普及していくと信用不安ニュースが流れた銀行から瞬時にして大量の預金が流れ出すといったことが将来起きる可能性はありそうだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3月でナスダックの底入れ感は... | トップ | レトロな建物には白黒写真があう »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

投資」カテゴリの最新記事