アメリカは定年がない国である。年齢による強制的な退職は、差別と考えられているからだ。しかし実際上は公的年金が支給される62歳から公的年金がフルに支給される66歳(生まれた年により若干異なる)の間で退職する人が多いようだ。また最近は平均退職年齢は伸びる傾向にある。そのようなことから国連が高齢者の基準としている65歳が退職年齢の基準と考えてよいだろう。
その65歳人口がここ数年ピークを迎え、それが金融界に影響を与えるという記事がWSJに出ていた。記事のタイトルはWhat the record wave of new 65-year-olds means for Wall Streetだ。
記事によると2024年から2027年の間で毎年410万人以上が65歳を迎えるという。これをPeak 65 zoneと呼んでいる。
記事は「金融サービス業にとって、退職するということは、人々が働かないことで失う収入を穴埋めするために高利回りが期待できる投資への需要が高まる可能性がたかい」と述べる。
そしてそれは個人年金の販売額拡大につながっていると記事は述べる。
「生命保険市場調査会社ウィンクによると、2022年の米国の個人年金売上高は3千億ドル未満だった。2024年の売上高は4千5百億ドル、2025年には5千2百億ドルを超えると予想される」
ウィンクの社長は「金利が魅力的であり、市場が上昇傾向にある限り、年金の販売は好調に推移するだろう」と述べている。
このような退職者の貯蓄傾向の変化は、個人の資産が銀行から保険会社にシフトし、保険会社と連携する資産運用会社の手に委ねられる可能性が高いことを示唆している。
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この話を我々の資産運用の点から見ると次のようなことが言えるだろう。
・アメリカの個人資金は、リスク資産へのシフトが続くだろう。ただし総てが株式や国債など市場性の高い運用ではなく、一部は代替資産運用に向かう可能性はある。とはいえここ数年アメリカの株式市場に個人資金の流入が続くという可能性は、米国株式市場の底堅さを裏打ちしている。
・個人年金を取り扱う生命保険会社の株価動向には注目。
記事はネガティブ面にも言及していた。それは高齢者のクレジットカード負債の増加など高齢化に伴う返済リスク上昇だ。
この問題は頭の隅に置いておかないといけないが、トータルで見ると、Peak 65問題は少なくとも米国株には、プラス材料であり、それについていける日本人にもプラス材料だろうと私は考えている。
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