今日(11月1日)の新聞によると田母神航空幕僚長が不動産会社アパ・グループの懸賞論文に応募して、「第二次大戦において日本が侵略したというのは濡れ衣だ」という趣旨の論文を書いた。ニューヨーク・タイムズによると彼の論文がアパ・グループのホームページに出た1時間後に彼は幕僚長を首になったと報じている。田母神氏の論文を見られたい方はこちらへhttp://www.apa.co.jp/book_report/index.html
私はこの論文をざっと読んでみたが、幾つか歴史的事実として正しいことを書いているところがあると感じた。例えば「ルーズベルトは戦争をしないという公約で大統領になったため、日
米戦争を開始するにはどうしても見かけ上日本に第1 撃を引かせる必要があった。日本はルーズベルトの仕掛けた罠にはまり真珠湾攻撃を決行することになる。」というのは概ね事実であろう。
一方第二次大戦における日本軍の行動に対するアジア諸国の評価については大いに問題があると感じている。「私たちは多くのアジア諸国が大東亜戦争を肯定的に評価していることを認識しておく必要がある。タイで、ビルマで、インドで、シンガポールで、インドネシアで、大東亜戦争を戦った日本の評価は高いのだ。」という文章は大いに問題だ。まず大東亜戦争(第二次世界大戦を田母神氏は大東亜戦争と呼ぶ)をアジア諸国が肯定的に評価しているのかどうかを示す根拠がない。タイで、ビルマで日本の評価が高いといっても統計的に示された訳ではない。一部に日本を高く評価する人がいるかもしれないが、日本軍から被害を受けた人達は日本を批判している。要はこのような単純が断定は行えないと私は考えている。
だが私が一番言いたいことは田母神氏の論旨の正否ではなく、立場をわきまえぬ発言姿勢に問題があるということだ。
論語の泰伯第八の中に次の一文がある。 子曰く、其の位に在らざれば、其の政(まつりごと)を謀(はか)らず
意味は政(まつりごと)はその地位に在るものが謀るべきことで、その地位にいないものが分限を越えて政治に口を出すべきではないという意味だ。
もし自衛官が政治に口を出したいのであれば、自衛官を辞めてから政治的発言を行うべきである。
今回政府が田母神氏を迅速に更迭したことは正しい判断である。軍人が政治に口をした時、国を滅ぼすほどの過ちを犯したことを我々は思い起こす必要がある。
しかし歴史を研究する人が色々な説を述べることは自由だ。それにより正しい歴史的認識が形成されていく。だが歴史的事実に関する議論は実証的でなくてはならない。思想的ではいけないと私は考えている。幕僚長を降りた田母神氏が今後どのような発言をしていくかはしらないが、断定を下す前に十分な論拠をしめして欲しいと考えている。
こんにちは。軍隊とは規律を重んじる組織ですが、今回の出来事自衛隊の規律が相当ゆるんでいることを示す査証だと思います。いくら自衛隊の幹部ともいえど、軍人は本当の意味で「頭」を使ってはいけません。仕事で「頭」を使いたければ、民間企業であれば役員以上、政治家などになれば良いのであって、軍人になるべきではないと思います。ここで、「頭」というのは、戦略を作成するときの方向付けとか、組織の理念、大儀などをつくるという意味です。特に民間企業であれば、空幕長は執行役員クラスだと思います。執行役員の本分は、取締役会などで決定されたことを執行することです。執行に責任があるのであって、執行する内容を決める立場ではありません。私は、今多くの日本人が組織の規律や序列などについて理解しなくなったことに対し非常に危惧しています。詳細は、是非私のブログをご覧になってください。