金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

過労死、英語になる

2007年12月24日 | 社会・経済

日本語のまま英語になっている単語は意外に多い。私はある日本語が英語になったかどうかの判定をウエッブサイトの辞書http://dictionary.reference.com/に出ているかどうかで判定している。過労死karoshiも同サイトにでていたので、英語になったのだろう。ところでどうして過労死の話題をだしたかというと、今週のエコノミスト誌が過労死の話題を取り上げていたからだ。副題は「日本の労働者は死ぬために働く」である。

この話は最近トヨタの元社員の過労死認定を巡る訴訟で原告側が勝訴した話をベースにしている。ポイントは次のようなところだ。

  • 腹切は日本のユニークな自殺のスタイルだが、その企業版は過労死だ。過労死が法的に認定されたのは80年代のことだ。過労死に認定されると遺族は国から年間約2万ドル相当(つまり2百万円強)の補償金を受け取ることが出来るし、企業から最大1億円程度の賠償金を受け取ることだできる。
  • 従って過労死認定を巡る訴訟が増えている。1988年には過労死と認定される割合は僅か4%だったが、2005年には40%に広がっている。
  • トヨタ元社員の内野氏は品質管理のマネージャーとして「小集団活動」(QC、創意工夫など)を無償で時間外に行っていたが、名古屋地方裁判所は小集団活動を仕事の一部と認定した。

この時間外の活動~これをエコノミスト誌はFree overtimeと呼んでいる~を残業と認定したことは、企業に大きなプレッシャーを与えることになるだろう。公式の統計では日本の労働者の年間勤務時間は1,780時間で米国の1,800時間より少し短くドイツの1,440時間より多い。しかしこれはあくまで統計上の話だ。エコノミスト誌は実態的には日本の3,40代の男性は週60時間以上働き、半分の人は残業代を貰っていないという。

  • 過去20年の景気低迷期に多くの企業は正社員をパートタイマーに置き換えたが、残った正社員の負担は一層重たくなっている。ハードワークや自己犠牲を評価するという文化的要素もこれらの傾向を後押ししている。
  • 世界一の自動車メーカーになろうとするトヨタは効率性と労働力の柔軟性で評価されているが、過労死した内野氏の未亡人は違った見方をしている。「トヨタは社員が無償で残業をしているから儲かっているのです。会社がその利益の一部を従業員とその家族のために還元するならばトヨタは真の世界のリーダーになれるでしょう」

この前某地方都市に遊びに行き、おばさんたちとお酒を飲む機会があった。そこでおばさん達の質問「まだお仕事をしているのですか?」・・・・

質問の趣旨が「職業に従事している」ということであれば、もちろん答はイエスだ。しかし質問の趣旨が「work hard」ということであれば、答は自信をもってイエスとは言い難いかもしれない。今日本会社を見ていると3,40代のものすごく働く正社員の層と業務の第一線から少し身を引いて「管理監督」の名前の下でのんびり仕事をしている50代後半の層がある。

過労死という言葉が英語辞書から消すためには、世代間の仕事の配分まで考え直す必要があるだろう・・・などと考えている。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 静岡でハイキング | トップ | 今年の燻製は豆腐から »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

社会・経済」カテゴリの最新記事