世界をけん引する米国株式市場は今9月来の様々な懸念を一旦脇に置き、好調な企業収益を好感して高値を追っている。
だが投資家が脇に置いた懸念材料は片付いた訳ではない。燻り続けいずれ大きな炎となり投資家を脅かす可能性がある。
その懸念材料の一つが中国の不動産問題だ。
CNBCはEvergrande(恒大)is 'just the beginning': Professor says more firms must exit China's property sectorという記事でテキサスA&M大学のLi Gan教授(中国の住宅市場問題の専門家)のこの問題に関する意見を紹介していた。
Li教授によると中国の住宅の約2割は空き家であるにもかかわらず、投資家は投資目的で第2、第3の住宅を購入する。そして開発業者は毎年数百戸の新規住宅を建てている。
同教授は中国の不動産市場を健全なものにするためには、不動産セクターを大幅にスリム化する必要があると述べている。
中国政府が3千億ドルの債務を抱える恒大をどう料理する予定かは知らないが、ある中国人民銀行の元顧問は先月CNBCに恒大は4つに分割されるろうという見通しを述べていた。
Li教授は「不動産セクターを使ってGDPを拡大する手法は中国にとって持続可能な道筋ではない」と述べている。
不動産セクターの減速はすでに始まっているが、その影響は今週発表された中国の第3四半期GDP成長率4.9%に表れていた。
不動産セクターの縮小と住宅価格の低下は長期的には消費者の住宅コストを下げるので一般消費の拡大につながり中国経済を健全化すると考えらえる。
だがそれは相当先の話で、恒大に始まる債務超過不動産会社の整理は多数の失業者を生み、大衆の不満は高まるだろう。この不満を押さえ込むため中国は台湾や日本に対し軍事面で強硬姿勢を強めると考えられる。
ところで空き家が沢山あるにも関わらず新築物件がドンドン建つという点だけを見ると日本も中国と同じようなものである。違いは中国で増えているのは新築の空き家で日本で増えているのは古い空き家という点だが、不動産の流通市場が不備で、都市計画や開発規制が機能していないという点では同じだ。中国も日本も住宅を経済成長のドライバーとして使い過ぎなのである。今の日本に必要な政策は、地球温暖化対策の観点からも新規住宅建設を抑制して、既存住宅(中古住宅)を活用することなのだが等閑視されているのである。
我々もまた別のリスクの上で安閑としているに過ぎないのである。
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