先週金曜日頃から日本ではAIJ投資顧問による年金資金の不正運用問題が話題になっている。もっとも資金運用において何が不正で何が不正でないか?という点に明確な線引きができるかどうか?というと疑問が残らないではないが。
そういえば2月18日のエコノミスト誌にFrom alpha to smart betaという短い記事が出いた。資産運用業界で言葉の定義が変わっていることを揶揄したものだ。
記事はある失敗したファンドから投資家当てのレターの形である。
曰く:
投資家の皆様
我々は業界の動向に合わせて、マーケッティングとコミュニケーションに使う言葉を少し変えます。まず重要なことは「ヘッジファンド」から「代替的資産マネージャー」に名前を変えます。2008年に我々は如何にしてヘッジすれば良いか分からなかったからです。
我々はかって市場動向に左右されない「絶対リターン」を約束していましたが、これは不可能になりました。そこで「リスク調整後リターン」という言葉を使いましたが、それに失敗すると「相対リターン」という言葉を使いました。2011年のように市場のパフォーマンスに較べてはるかに見劣りするリターンしか挙げられなくなるとリターンそのものについて、お気づきでしょうが、話を止めてしまいました。
また投資家の皆様が支払う手数料の根拠である「アルファ」についても、コンセプトを変え「スマートベータ」を提供する方向に動いています。
でも我々は「2-20%」という報酬体系でスタイル・ドリフトを行うつもりはありません。
失敗したファンド会社より
投資の世界でアルファとは「個々の証券(個別株式銘柄等)が持つ価値」のことでベータとは「その証券や同じ属性の証券が持つ市場の動きに対する感応度」を指す。例えば「証券株は感応度が高い」という言い方をするがこれは証券株は「株式市況が良くなるときはそれよりも良くなり、悪くなるときは輪をかけて悪くなる」ことを意味している。
スマートベータという言葉は余り聞きなれない言葉だが、市況の変化を先取りして、値動きの荒い株を持つことでパフォーマンスを高めようという位のコンセプトか?ただしこれはリスクを増やしているに過ぎないが。
資産運用業者が運用成果について虚偽の報告をすることは無論重大な不正だ。だが運用スタイルを変えてみたり、約束したリスク以上のリスクを取ったりすることは不正にならないのか?という問題となるとグレーゾーンは大きいかもしれないと私は感じている。