中村融編『SF映画原作傑作選 地球の静止する日』(創元SF文庫)は「古き良きSF」の宝庫という感じで楽しい。
なかでもシオドア・スタージョンの「殺人ブルドーザー」が初めて日本語で読めるのがうれしい。
この作品については、スタージョン自身が「私はもうブルドーザーが意識を持って人間を殺す話など書かない」とコメントしたことが有名。本人がそういうのなら、他愛ないモンスターSFなのかと思っていたのですが、読んでみると大違い。ブルドーザーを操ったことがあるという経歴を存分に生かしたアクションサスペンスSFの傑作。南海の孤島で、とある理由から生命を得たブルドーザーとあらくれ作業員たちが死闘を繰り広げるさまは、それこそ手に汗握るという表現がぴったりです。幻惑的な美文で知られるスタージョンが、ここでは鋼鉄のモンスターの不気味で力強い動きを躍動的に描き出している。
問題は読む当方がブルドーザーの構造や操縦法などをよく知らないこと。「履帯」といわれても、にわかにはピンときません(履帯=クローラー=無限軌道のこと)。
そこで「主役」を張っているキャタピラー社のD7ブルドーザーの外観などがわかるウェブサイトを探してみました。
あまりきちんとした検索ではありませんが、どうやらデンマーク軍の車両を紹介したこのページあたりがいちばんわかりやすいようです。
ここの写真を見て、下部ローラーと上部ローラーとはどんなものか、どこから熱湯が吹き出すのか、などと考えながら読むと楽しさは倍増。エスねこさんが教えてくださったウォード・ムーアの「ロト」など、他の作品もいいですよ。