庭木に掛けていたシジュウカラの巣箱を下ろしました。雛たちは一昨日、巣立ち、以来、空き家です。
屋根を外して、中を覗いてみると――
床にはびっしりと、枯草、苔、犬の毛などが敷き詰められています。厚さ、約5センチ。ふかふかで気持ちよさそうです。
内部はおおむねきれいですが、中央に卵の殻が1個。左下隅近くに糞が2個、残っていました。糞は、最後の雛が出てゆく間際に落としていったんでしょうね。これまでの経験では、糞が残っていたことはありませんでした。
いったい何羽、巣立ったのでしょう? 7~8羽といったところかな。
巣立ちの瞬間を見逃したのが、なんとしても悔やまれます。来年こそは。
ジョン・マクフィーさんの『ノンフィクションの技法』(栗原泉訳、白水社)。〈ニューヨーカー〉誌の事実確認部の話の続きです。
1973年、マクフィーさんは兵器用の核物質についての記事を書きました。その中に数行、第二次大戦中、日本から飛来した風船爆弾がプルトニウム生産のための原子炉を停めたというエピソードを織り込んだといいます。取材中、物理学者のジョン・A・ホイーラー氏(ワームホールの名付け親として有名ですね)から「確認不可能」として聞いた話を書いたのですが、あとは事実確認部に任せて、もし事実ならそのまま載るだろうし、確認がとれなければ削ることになると踏んでのこと。「あとは頼んだぞ」というわけです。
確認に当たったのは〈ニューヨーカー〉誌のセイラ・リッピンコットさん。科学関係の記事を担当していた女性だそうです。
彼女は、校了ぎりぎりまであちこちに連絡を取り、風船爆弾が原子炉を停めたのが事実かどうかを知る人物を探したといいます。たぐり当てたと思ったら、ホイーラーさんだったということも。
もう無理だ、あきらめようとした時、ついに原子炉の現場主任だった人と連絡がとれました。
記事の内容を電話で伝えられた彼は、「この話、どうして知っているんですか」と訊いたそうです。原子炉のことも、風船爆弾の被害のことも、戦争中は極秘中の極秘事項で、絶対外に洩らしてはいけなかったからです。
原稿には、風船爆弾が原子炉の建屋に落ちたと書いてあったそうですが、彼は電話口で、実際に落ちたのは原子炉の建屋ではなく、原子炉に電気を送る高圧線で、「高圧線に触れて、風船は炎上しましたよ」と教えてくれたとか。
かくして、風船爆弾のエピソードは、無事、記事になったというのです。
読んでいて、この事実確認の姿勢は凄いと感嘆しました。
最近は、日本の出版社でも校閲のチェックが厳しいところが出てきましたが、しかし、まだここまでは来ていません。アメリカのノンフィクションの質が高いはずだと、納得しました。
で、ふと思ったのは、もしかしたら、私はこんな仕事が結構向いているかも。