さて、この2本、よく見ると捩れ方がちがっています。右側は真上から見ると時計回りに巻き上がっていて、左は反時計回り。
タイトルの「二重螺旋」は適切ではなかったかもしれません。こんなDNAはあり得ないですよねえ。
ネジバナの捩れ方に一定の方向はないそうです。その時、その時で決まるようで、中には途中で巻き方が変わっているのもあるとか。
今日、別の芝生で3本のネジバナを見たのですが、1本が時計回り、2本が反時計回りでした。
昨日も参照した多田多恵子さんの『したたかな植物たち』によれば、この花ひとつに数十万個ものタネができるそうです。タネ1個の重さは0.0009ミリグラム! 100万個でようやく1グラムに届くかという軽さです。小さくて軽いので遠くまで飛んでゆけるのでしょう。
一般にランの仲間は地中のラン菌の助けを借りて芽生えますが、ネジバナは特にラン菌への依存度が高く、最終的にはトゥラスネラ・カロスポラというラン菌の菌糸を分解し、自分の養分として吸収してしまうのだそうです。
多田さんは「二者の関係は〈共生〉ではなく、ランがラン菌に〈寄生〉して一方的に利益を搾取しているといえる」と断言しています。哀れなトゥラスネラ。
しかしたいした雨ではなく、夕暮れ時には陽が射し、うっすらと虹もかかりました。
今日のステレオグラムは、この時期、芝生でよく見かけるネジバナ。ラン科の多年草です。
数ミリの小さな花ですが、アップにするとランの一種であることがよくわかります。カトレアに似ていますね。
出会ったネジバナはたまたま2本接近して生えていたので「二重螺旋」となっていました。生命の神秘を花の形で具体的に見せてくれています。
ところで、ネジバナの花はどうして捩れて咲くのでしょう?
いつも参照する多田多恵子さんの『したたかな植物たち』(SCC)にはネジバナの章があり、この小さな植物の驚くべき生存戦略について述べられています。
それによると、小さな花は集まって咲くと虫を呼ぶのには有利。しかし、たくさんの花が同じ方向に咲くと、重くて茎はそちらに傾いてしまう。そこでネジバナは花の向きを順繰りに変えた、というのです。
こうすることで小さな茎なのにまっすぐ立ったまま花をつけることができるのですね。素晴らしい。
同書によると、ネジバナ――というかランの驚異はまだまだあるのですが、それはまたの機会にでも。