金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

(書評)五十歳からの生き方

2005年05月17日 | 本と雑誌

「五十歳からの生き方」 中野孝次著 海竜社 1,500円 

最近本を読むことが多くなっている。夜の付き合いとかゴルフが減っているせいだ。ゴルフはテニス肘をいたわるためご無沙汰している。勢い読書が増えることになる。

読む本は多岐にわたり、現在の人が書いた人生論的なものも手にする。ただしこの手の本は余り買わないで図書館で借りることにしている。著者には申し訳ないが古典に比べると繰り返し読むことが少ないので買うと無駄になるのではないかと思うからだ。

「五十歳からの生き方」も近くの図書館で借りて読んだ。

著者の意見に全面賛成ではないが、印象に残るところを2,3引用しよう。

そのころ(50歳のころ)から人は生きる軸足をそろそろと、社会生活から私へ、組織のため働きから自分のための働きへ、忙から閑へ、要するに自分一個の生に生きるほうへとうつしてゆくべきだだ、と思うからだ。(あとがきより)

自然はもう驚くほど神秘的だよ。名もない路傍の植物が本当に精妙な花を咲かせる。・・・

こういう摩訶不思議な自然現象を思うと、われわれがいま、ここに生きているのは、すごいチャンスに恵まれた結果だということもわかる (加島祥造氏の言葉 心を洗う古典の力より)

人の幸福は、外部の時間に自分を合わせていては得られない。自分だけの時間。「吾有時」(ごいうじ。道元の言葉)を人は生きなければいけない、と道元は言っているのだった。(人を幸福にする方法)

中野氏は「社会生活」対「私の生活」で区切っているが、私は人生を4分割して考えている。「職業・経済人としての生き方」「家庭人としての生き方」「市民としての行き方」「一個人としての生き方」であり、これをバランス良く保つことが「良い生き方」=先進国で良き市民と考えられる生き方ではないかと思っている。

その比重が年齢ともに残り3つから「一個人としての生き方」に移っていくことは間違いないが、完全に「一個人としての生き方」に徹することができるものなのか?そしてそれが正しいことなのか?という点には疑問が残る。

(もっとも「死」の直前に残るのは「一個人としての自己」のみなので「私の生活」こそが大事なのだと言えばそれまでなのだが・・・)

現実には中年になっても親がいて子供がいる。妻もいる。年老いた親の健康も心配である。完全に出家でもしない限り自分だけの時間を生きることは不可能だ。余程恒資(安定資産)でもない限り、50代は老後資金の蓄積期だから仕事も放擲する訳には行かない・・・・

またボランティア活動などを通じて「市民」としての務めも果たすべきではないだろうか?

私は私なりに少しずつ生き方の4本柱の軸足を変えていく・・・・それが私なりの中庸(お釈迦様がもっとも重視したこと)の生き方である。

中野氏がこの本の中で引用した兼好法師だとか鴨長明といった人生の達人になることはやはり不可能なことなのかもしれない・・・と思った。「人生の達人」はやはり資質(仏教用語で言えば「法器」)の問題なのであろうか?

ということで全面的にお奨めする訳ではないが、一読して自分の生き方を棚卸する時の目安にするには良い本であろうと思った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米大手プライベートエクイティ、インドへ向かう

2005年05月17日 | 株式

ウオール・ストリート紙によれば、米国の大手プライベート・エクイティであるブラックストーンがインドへの投資に10億ドル準備したということだ。

ポイントは以下のとおり

  • ブラックストーンは米本国、欧州で巨額の投資を行っているが、アジアに注目し始めた。しかし極東をターゲットとする大部分のプライベートエクイティと異なり、インドを目指している。
  • ブラックストーンの意思決定は、中国、日本、韓国に対する失望の中で行われた。事実幾つかのプライベートエクイティは韓国と日本でプライベートエクイティに対する反発があることを感じているし、この3国への資金流入はあまりない。
  • これに対しインドは、多くの儲かる投資機会を提供している。ウオーバーグ・ピンカースは約10億ドルをインドに投資してこれを上回る利益をあげた。同ファンドは更に10億ドル投資しているが、こちらはまだ利益を実現していない。この成功を見て他のプライベートエクイティもインドに焦点を当てつつある。
  • このインド熱は、インドの強い経営文化を反映している。クレディリヨネ証券(アジア)は「インドの企業は極めてリターン重視」であるが「これに対して中国の企業は、市場シェア重視で動いている」と言う。
  • とはいうもののプライベートエクイティにとってインド独自の困難さはある。インドでは公開株式市場が活発なので、新興企業が公開市場から簡単に資金を調達することができる。従ってプライベートエクイティと公開株式市場が競合している。
  • 通常プライベートエクイティは、超富裕層や機関投資家のために、非公開企業の株式の過半または支配権を取るものだが、インドでは公開企業の少数持分を取得しているケースが大部分である。
  • ブラックストーンがインド投資に向かうことで、米国の大手買収ファンドでインドに投資していないのはKKRだけになる。しかし同ファンドのヘンリー・クラビスが数週間前同地を訪問しており、多くのライバルファンドはKKRがインド投資を発表すると見ている。

この一連の動きが示唆するところを少し考察してみよう。

一つは中国への失望感・懸念である。米国株式市場で少し前まで言われていたことは「中国が買うものを買え」ということだった。中国が牽引する世界経済の拡大を受け、鉄鋼株・石油株・鉱業株等がブームだった。しかし3月以降世界経済の減速傾向が見えてきてこれらの中国銘柄~鉄鋼や石油~が、株式市場の下落を牽引している。

また一連の反日抗議運動等も悪材料を提供していると考えられるし、S&Pが明らかにした中国銀行界の不良債権の大きさも懸念材料だろう。

中国が為替制度の見直しを行わない場合、米国議会が制裁処置を立法化する懸念もある。

一方インドはそれらのリスクが少ないので、インド投資が注目を浴びていると考えて良さそうだ。

個人投資家にとっても、インドは注目先であろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする