金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ヘッジファンド、風雲急を告げる

2005年05月13日 | 金融

平成17513

GM、フォードの格下を一つの起因としてヘッジファンドの雲行きが危くなったことが、欧米のマスコミで大きく取り上げだされた。(無論その前からエコノミスト誌等は警告を発していたが)

特に権威がありかつ以前からヘッジファンドに警告を発していたエコノミスト誌が具体的に懸念を述べた影響は大きいだろう。

これによりヘッジファンドのみならず、株式・クレジットデリバティブ市場等も相当影響を受ける可能性がある。

取りあえずエコノミスト誌とファイナンシャルタイムズ紙に載った米国証券取引委員会ドナルドソン委員長のコメントを簡単に紹介しよう。

エコノミスト誌(05/05/12)~意訳

ヘッジファンドは激しく打ちのめされつつある。市場、規制当局そして公衆の意見が揃っている。後は投資家の信任が失われるだけである。市場が一番厳しい。ヘッジファンドはGMとフォードの債券を買い持ち、株式を売り持ちしていたが、市場はヘッジファンドの目論見と逆に動いた。GMの株を億万長者のカーコリアン氏が買うというニュースで株価は急上昇、一方格下で債券は急落した。

今週クレジット・デリバティブスとストラクチャード・ファイナンスの他の戦略で問題が危機に直面している。

CDOCollateralized Debt Obligations)が、プールされたクレジットの質の劣化のみならず、プール内の企業のリスクを相殺すると考えられていた相関関係が破綻したことで打ちのめされている。ヘッジファンドはこのCDOの中の一番リスクの高い(つまり最劣後の)エクイティ部分を取り、それを担保に融資を受けている。

投資適格のデフォルトスワップのスプレッドとハイイールド債券指数とも急激に上昇している。

S&Pは全体的には極少数のCDOを格下するか、ネガティブ・ウオッチに置くだろうと予想している。欧州の745CDOの内、GM・フォードを含むものは35で、米国のCDO265の内GM・フォードのリスクを取っているものはたった一つである。

しかしこれだけで幾つかのヘッジファンドが重大な問題を抱え、それらと取引している投資銀行に懸念ありという噂に火をつけるに十分だった。

多くのヘッジファンドにとって苦しい時期が訪れている。ヘネシー社の複合ヘッジファンド指数によれば~最低ヘッジファンド業界の半分はカバーしている~4月に指数は1.9%下落している。

リターンの振れが予想される。誰もLTCM危機の再来を示唆していないが、市場の大混乱は重要なことである。

ヘッジファンドは急拡大するデリバティブ市場に最初のストレス・テストを提供しているし、リスク・テーカーになっている。投資銀行はヘッジファンドをある種の自己ポジションのリスクヘッジにヘッジファンドを使っている。これにより金融市場が円滑に回っている側面があるが、将来これが困難になる可能性がある。バークレーズ・キャピタルによれば「合成的CDOの発行は漸減するだろう」と述べている。

ファイナンシャルタイムズ紙(05/05/12

米証券取引委員会のドナルドソン委員長は「市場リターンを凌駕するというヘッジファンドの目論見は大失敗に終わる可能性がある」と述べた。同委員長の発言は市場に幾つかのヘッジファンドがクレジットデリバティブ関連の複雑な取引で大きな損失を出したのではないかという懸念が走ったことをフォローしている。

GM/フォードの信用悪化に伴う市場の混乱を受けて、当局は今週ヘッジファンドの活動について詳細な調査を行っている。

バークレーズ・キャピタルは木曜日に、市場の流動性が急激に低下しているので、多くの長期的な投資家はリスクの引き受けについて一層神経質になっている。その結果ヘッジファンドと銀行の自己勘定部門の取引が太宗を占めている。バークレーズ・キャピタルによれば、3月には全体の取引の25%であったヘッジファンド・銀行自己勘定取引が最近では40%を占めている。ヘッジファンドは自己のポジションを守るためクレジットプロテクションを買おうとするので、クレジット・デフォルト・スワップのスプレッドが急拡大している。またクレジット・デフォルト・スワップ取引が急増している。

バークレーズは「流動性の欠如は続きそれがオーバーシュートとリスク回避傾向を高める。そしてこれは広い範囲の資産クラスに影響を及ぼすだろう」と言う。

1998年のLTCMの崩壊(正確にはnear-collapse)以来、ヘッジファンドの活動に対する懸念から規制強化が要求されてきた。証券取引委員会は昨年15顧客以上の顧客を持つヘッジファンドは証券取引委員会に登録すべしと規制を変更した。ただし規制強化については証券取引委員会の役員の中でも意見が分かれた。

規制強化反対派(例えば連銀のグリーンスパン議長を含めて)は、ヘッジファンドは市場に流動性を与え、他の投資家が取りたがらないようなリスクを吸収していると信じている。

グリーンスパン議長は先週「このようなヘッジファンドの市場における効果は当局の規制から自由であることで強化されている」と述べた。

しかしながらグリーンスパン議長は投資家がヘッジファンドから逃げ出すというリスクやヘッジファンドがハイレバレッジな取引で巨額の損失を出す可能性を含む正当な懸念について認識していることを示した。

                                                                                                                              以上

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