金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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日銀金融政策変更の影響

2005年05月31日 | 金融

日銀は金融市場調節方針になお書きで「資金需要が極めて弱いと判断される場合には、当座預金残高目標を下回ることがありうる」という一文を加えたが、これが海外でも話題を呼んでいる。

ウオール・ストリート紙は市場調節方針の変化が国債利回りを2%程度まで押し上げる可能性があるという記事を5月31日発表した。

主旨はこうだ。

  • 日銀の方針変更は市中銀行の資金需要が弱いので30兆円~35兆円の当座残高維持が困難になっているので、一時的に残高維持目標を下回ることを容認することにした。
  • 多くのアナリストはこの小さな方針変更は、将来の金融引締めへの最初の警告と受け止めている。幾人かのアナリストは9月にも日銀は流動性目標を引き下げると言っているが、他の者は2006年度中に引下げが起こると見ている。
  • もし引下げ幅が3兆円~5兆円又は株式市場や経済が弱い時に引下げが行われるなら債券市場への影響は重大ではない。しかし引き下げ幅が5兆円を越えていると、国債利回りを2%(現在は1.25%程度)へ押し上げる可能性がある。
  • 現在のところ市場は、景気が弱いのでこの当座残高目標の引き下げを織り込んでいない。しかし景気が良くなり株価が上昇する中で、日銀が引下げを行うと債券利回りは2%へ上昇するというのがトレーダーの見方である。

一方エコノミスト誌はこの金融政策の変更と財政政策の変更の可能性について日本の景気回復を妨げると激しく非難している。

その主旨はこうだ。

  • 日本は今政策上3つの過ちを犯している。その一つは対中国政策。中国向け輸出が2002年から昨年まで日本経済成長に占める割合は大きいが、ペースは落ちてきている。国内経済の回復が第一四半期のGDPの強い数値に貢献しているが、それが確固たるものかどうかははっきりしない。従って中国との融和・輸出増加が必要だが小泉首相の対中国外交は大失策である。
  • 先週日銀は金融緩和政策の終了に向けて第一歩を踏み出した。市場観察者は当座残高維持目標の引き下げが今年の後半には行われると見ているが、これは財務省が税金引き上げという失策を行う前に日銀が金融政策の誤りを起こす可能性が高い。
  • 日本の経済は財政・金融政策の引締めを警告するには弱すぎる。しかし日本の政策当局は経済上の必要性よりも自己の組織の目標を設定することに忙しい。

エコノミスト誌は畢竟金融。財政政策当局は経済指標を読み誤り、実体経済はそれ程良くないにも係らず、引締政策を取ろうとしているがそれは危険だと言っている。

日銀の当座預金残高目標の動向が今後大きな影響を持ってきそうである。

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